吉田義男氏(中央)、福本豊氏(右)からアドバイスを受ける近本(撮影・清水貴仁)
吉田義男氏(中央)、福本豊氏(右)からアドバイスを受ける近本(撮影・清水貴仁)

阪神の日本一監督・吉田義男氏(85=日刊スポーツ客員評論家)が3日、沖縄・宜野座キャンプを視察し、ドラフト1位の近本光司外野手(24=大阪ガス)にプロで活躍するための「金言」を送った。

   ◇   ◇   ◇

近本が汗をかく姿に、自分のルーキー時代をだぶらせていました。わたしは鹿児島の鴨池球場で行われた1年目のキャンプで二塁を守っていた。同じポジションに河西俊雄さん、西江一郎さん、内山清さんら、3人の先輩が前にいた。わたしは半ばボール拾いのような扱いだった。

しかし、キャンプ終盤に、ショートを守っていた白坂長栄さんが故障に見舞われた。その代わりに抜てきされたのが、わたしでした。指名したのは、監督だった松木謙治郎さん。その年の開幕は、二塁白坂、遊撃手は吉田でした。そこからわたしは、ずっとショートストップの座を守り抜くわけです。

プロは実力の世界で、なにが幸運をもたらし、なにが災いになるかわからない。近本に言いたいのは、チャンスは多くない。いかに限られたチャンスをつかむか。キャンプ第1クールの動きをみていると、最大の武器は「足」だと思いました。どんどんアピールしてほしいです。

ネット裏では、阪急で「世界の盗塁王」と称された福本(豊)君と一緒になった。彼も近本のように小柄で、新人の頃は逆方向の左に打って内野安打を狙った。ところが、監督の西本幸雄さんに叱られ、バットを振り切るように教えられた。打って、守って、走ってのリードオフマンに育っていったのです。

近本は高めの球を得意とし、打ち分けるタイプでした。今は長打には乏しいが、ライナー性の打球を飛ばします。目標は大きく「虎のフクモト」ですわ。前も、隣も、全員がライバルです。それを蹴落とし、1年目からレギュラーを奪いとる心意気で臨んでほしいです。(日刊スポーツ客員評論家)

ベースランニングを行う阪神近本(撮影・清水貴仁)
ベースランニングを行う阪神近本(撮影・清水貴仁)