引退試合に臨んだ広島石原慶幸捕手(41)が、本拠地で現役最後の勇姿をみせた。

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「今季限りで…」という連絡を石原からもらったときは、やはり寂しさを感じたものだ。現役時代、いっしょにプレーしたし、何より監督になって25年ぶりの優勝、そこからの3連覇を支えてもらったんだ。本当にありがたかった。

特に印象深かったのはこの日、投げた中村祐が先発した18年4月24日のDeNA戦だ。8回1失点でプロ初完投勝利がかかっていたが9回に連続四球などで1死満塁になり、降板させた。そりゃあ悔しかっただろうし、実際に涙を流していた。ベンチに戻っても、そういう感じだった。

それでもチームが勝利に向けて戦っているときにこれは良くないな、と思って声を掛けようと思ったときだ。石原が中村祐のところに動いたんだ。「チームみんなで戦っているんだから」というようなことを言って、諭してくれたようだ。

その姿を目にして本当にうれしかったし、ありがたいなと思った。これが自分が目指していた形なんだと思った。チーム一体になって戦っていくということは監督になってから、ずっと言っていたことだ。目の前で石原がその姿勢を示してくれたんだ。

投手とのコミュニケーション能力が抜群で1人1人の良さを引き出すことにかけては、今でも右に出るものはいないと思っている。一時代を築いた捕手なのは間違いない。本当にお疲れさまでした、と言いたい。(日刊スポーツ評論家)

巨人に勝利した広島緒方監督(左)は笑顔で石原を出迎える(2019年4月17日)
巨人に勝利した広島緒方監督(左)は笑顔で石原を出迎える(2019年4月17日)