中日が終盤の逆転劇で接戦を制し、交流戦の首位を守った。好調のリリーフ陣が逆転弾を浴びながらも、しぶとく勝利を手にした。日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏(50)は投手陣の充実を認めつつも、さらに上位を狙うため、バッテリーの脳内整理を説いた。

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以前、脳内メーカーという診断がはやった。頭の中を「仕事」「家族」「お金」などに分類し、人の考えを「見える化」した。

捕手として守備の時、状況に応じて脳内を整理していた。大まかに3つの要素になる。「試合の流れをくむ」「最悪を想定する」の2つは変わらないもの。中日バッテリーは1点リードの7回の守備は先の2つに「先頭を出さない」という要素を加えて、整理をする必要があった。

1要素を10個ずつとし、この状況で脳内の割合をあえて示せば「先頭を出さない×14個」「試合の流れをくむ×12個」「最悪を想定する×4個」となる。直前の味方の攻撃は1番からの好打順も3者凡退。流れが悪くなりつつあることを察知し、比重を高める必要がある一方で、勝ちパターンの福の投入で逆転される可能性は低くなり、最悪のケースにそこまで頭を占められることはない。

先頭を出さないことを重視する時、投手が代われば私はブルペンからマウンドに上がる投手の顔つきを観察し、精神状態をうかがった。5球の投球練習では持ち球の状態を見極めて優先順位をつける。

この日の福はスライダー、カットボールの精度が悪かったが、多投してカウントを悪くし、先頭の角中を歩かせてしまった。無死一塁で6番レアードを迎え「先頭を出さない」は「長打を打たれない」に変わる。流れもさらに悪くなり、「最悪を想定する」は1発逆転が最悪のシナリオ。この展開では3要素を10個ずつ均等に配分し、すべてに神経を払う必要がある。

だが1ストライクから内角要求のカットが甘く入り、最悪の逆転弾を許した。精度の悪いカットは見せ球に使うにしても、ゾーン内は直球で押すべきだった。福はスライダー、カットの状態が悪いことを自覚していたか。逆に捕手の木下拓は状態がいいと見誤っていなかったか。

脳内は3要素がごちゃ混ぜになっていたら意識が散漫となり、きちんと整理して頭の中に配列しなければいけない。バッテリー間で頭の中の意識が統一されていなければいけないし、そのために日ごろから意思疎通を図る必要がある。

交流戦1位中日の最大の強みは12球団防御率トップの投手陣。打線が上向けば歯車がかみ合い、脳内を整え、展開に対応していけばさらに上を目指せる。(日刊スポーツ評論家)

中日対ロッテ 7回表ロッテ2死一塁、降板する中日2番手の福(右)。捕手木下拓(撮影・森本幸一)
中日対ロッテ 7回表ロッテ2死一塁、降板する中日2番手の福(右)。捕手木下拓(撮影・森本幸一)