今季初登板の佐々木朗が、6回3失点。高卒3年目の投手だけに、上出来だと思える数字だろう。しかし持っている能力のケタが違う。それだけに少し物足りなく感じてしまう。厳しく言っているわけではない。佐々木朗のピッチングは、それほど「すごみ」を感じさせるものだった。

立ち上がり、160キロ台の直球を連発し「日本人でこんな球を投げる投手がいるのか」と、思わず苦笑いしてしまった。昨年は思い切って腕を振ると制球が定まらず、手加減して投げているように感じたが、今季は違う。楽天の打者が気の毒に感じてしまうほどの球威だった。

物足りなく感じてしまうのは、誰もが投げられない直球を投げられる半面、誰でもできる技術が備わっていないからだ。

味方打線が1点を先取した直後の投球だった。3回、先頭の渡辺佳(左打者)に対し、初球154キロの真っすぐが外角にシュート回転して外れ、ボールになった。打順は7番で一番いけないのは四球だが、次球の真っすぐもボール。結局、5球真っすぐを続け、逆転の口火となる走者を四球で出してしまった。

佐々木朗は力でねじ伏せるピッチングはできるが、打たせて取る投球ができない。ストライクを取ろうとして投げると、ボールがシュート回転して制御できなくなる。力をセーブしても150キロ台の真っすぐを投げられるだけに、もったいない。1点を失った6回も、1番から始まる打順で、先頭の西川にストレートの四球を与えた。

走者を出してからのリズムも同じになってしまう。打者はタイミングを合わせやすいし、走者も走りやすくなる。キャッチャーがルーキー松川だけに、ベンチから指示を出して投球テンポを変えさせてやった方がよかった。ブルペンではリズムを変えて投げる練習をした方がいい。

これらの技術は、ローテに入っている投手でも出来ない投手はいくらでもいる。しかし、佐々木朗ほどの球が投げられれば、どれか1つの技術ができるようになっただけで、勝率はみるみる上がっていくだろう。

今季は抹消をせず、ローテーションに入って投げると聞いている。そうなれば、これまで登板経験が少ないだけに、技術は向上していくと思う。今まで見たこともないような、とてつもない投手になる姿を楽しみにしている。(日刊スポーツ評論家)

楽天対ロッテ 6回裏楽天1死二塁、浅村(左)に左前適時打を浴びるロッテ佐々木朗(撮影・鈴木正人)
楽天対ロッテ 6回裏楽天1死二塁、浅村(左)に左前適時打を浴びるロッテ佐々木朗(撮影・鈴木正人)
楽天対ロッテ 1回表楽天無死、西川から空振り三振を奪うロッテ佐々木朗(撮影・鈴木正人)
楽天対ロッテ 1回表楽天無死、西川から空振り三振を奪うロッテ佐々木朗(撮影・鈴木正人)