阪神が中日にサヨナラ負けし、開幕からの成績が1勝14敗1分けとなった。勝率はプロ野球史上最低の6分7厘。勝利が遠いチームの戦いぶりを、日刊スポーツ評論家の和田一浩氏はどう見たのか。

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開幕からしぶとい戦いをしている中日と絶不調の阪神の戦いは、0-0のまま延長戦に突入した。最後は中日がサヨナラ勝ちしたが、試合内容は投手戦というより、貧打戦だった。

膠着(こうちゃく)した試合展開で大切なのは、ささいな流れの変化を見逃さないこと。阪神は今季初登板だった加治屋が9回から6番手で登板。ビシエド、阿部、木下を3者三振に打ち取ったように球のキレも素晴らしかった。

阪神ベンチが「もう1イニング」と考えるのも理解できる。ただでさえ先発予定だった伊藤将がコロナで回避。今試合は継投で乗り切るしかないし、ここまで5人の投手が登板していた。調子のよさそうな加治屋を延長10回のマウンドにも送り出した。

しかし、右打者の石川昂をショートゴロに打ち取ったが、左打者の京田に二塁打を打たれ、代打の左打者・根尾にも四球を与えた。

右打者に対しては外角のカットボールが抜群のキレを見せていたし、フォークボールも引っ掛け気味に外角低めに決まっていた。しかし京田と根尾の左打者に対してはカットボールは1球だけで、フォークも投げにくそうにしていた。おそらく右打者に引っ掛け気味に投げていただけに、左打者には死球を恐れて投げにくかったのだろう。

ここで左打者の大島を迎え、左の岩崎に代えると思っていた。しかし加治屋を続投させた。大島はフォークを2球続けて空振りしたが、3球続いたフォークが甘く入り、サヨナラヒットとした。

2ストライクからフォークが甘く浮いたのだから、投手の失投で間違いない。しかし投げミスする前兆は京田と根尾の打席にあった。勝負どころなだけに、この場面こそ手堅くいくべきだった。

継投や代打の選手起用は、どうしても結果論になる。それでもベンチの方針に一貫性を感じなかった。

5回2死二塁から緊急先発で踏ん張っていた小川が大島を打席に迎えて左腕の岩貞に代えるなら、最後の場面は岩崎でいい。手堅くいっていたのに、最後の勝負どころだけ選手任せになったと思われてしまう。

チーム状態が悪いときは、ベンチが勇気を持って動かなければいけない。6回1死一塁で中野を迎えた。真っすぐが2球続いて1-1。勝野はクイックがそれほど得意ではないし、変化球が来そうな状況。ヒットエンドランをかけても走者は近本で、低めの変化球を空振りしても盗塁が決まる確率は高かった。

打てないときはベンチが積極的に動き、1死三塁か1死一、三塁の状況を作りたい。そうなればヒットでなくても犠牲フライや内野ゴロの間に得点を狙える。単独スチールは2度成功していたが、三塁にいったのは初回だけだった。

一方の中日はひたすら我慢の野球。一瞬の隙をついて勝利した。現状の両チームの差を感じた試合だった。(日刊スポーツ評論家)