今の阪神が置かれている状況は、いかなる形であれ白星が一番だった。青柳のポイントを押さえた投球が、5回佐藤輝、8回ロハスの2本のホームランを呼び込んだといえる。

今シーズンは速い球を使いたいという意図はうかがえたし、うまく沈む球で要所を封じた。特に3つのゲッツーをとったのが野手と呼応し、ひいては効果的な2本塁打につながった。

逆に巨人バッテリーの配球には「?」がついた。5回2死二塁から佐藤輝に2ランを許した場面は、ストレートに振り遅れている打者にスライダーの選択は首をかしげる。

カウント2-2。あの場面の菅野-大城の巨人バッテリーは「ヒットを打たれるのも、1点を奪われるのもイヤ」といった心理が働いたインサイドワークだったようにみえた。

スライダーを投じるのであれば、外に逃げる、あるいは外から入れるスライダーだろう。佐藤輝の打撃は少し抜かれたところを、うまくバットに引っかかった当たりになった。

また8回には大山が坂本の失策で出塁後、巨人3番手の畠が勝負の早い外国人のロハスに対し、初球から内寄りの甘い直球では、きめ細やかさに欠けたと言わざるを得なかった。

1つ勝ったとはいえ、阪神打線は、つないで、つないでの連打が期待できそうになかった。この前の中日戦もさっぱりだったし、ストレートを打ち返せるのが近本ぐらいでは厳しい。

このオーダーも少し当たりが出てきた中野の1番から、佐藤輝、近本と調子のいい3選手を並べたという打線だ。ロハスに結果がついてくると打線は少し厚みを増すから、どこかで勢いをつけたい。(日刊スポーツ評論家)