高卒3年目を迎えた阪神の西純が、交流戦の楽天戦に先発した。前回のヤクルト戦でプロ入り初完投で今季2勝目。楽しみな若手投手なだけに注目して見させてもらった。

体格にも恵まれ「強い真っすぐ」を投げられる。高校時代にも見ていたが、当時と比べると格段によくなっていた。テークバックを小さくし、腕が振り遅れなくなっている。だから左肩の開きも抑えられ、シュート回転する真っすぐが減っていた。三塁側のプレートを踏んで右打者の外角に投げる球も、角度がつくようになった。将来性は十分で、これから楽しみな右腕だと断言していい。

それでもプロの一流投手と比べると、まだまだ課題はたくさんある。まず、今試合では高めの浮く真っすぐが多く、変化球の精度が悪い。現時点でいうと、調子のいい時は抑えられるが、悪い時は勝てないレベルだろう。

ただ、ちょっとしたこつをつかめば改善できそう。まず少し「突っ立ち投げ」で、もっと重心を低くするだけで低めに投げられるようになる。

本人は歩幅を狭くしてフォークの落ちがよくなったと手応えをつかんだそうだが、少し狭すぎる。真っすぐが高めに浮く原因になっている。投球フォームというのは個人によって違うが、大事なのは真っすぐを軸として組み立てること。フォークの落差を考えてフォームを作るのではなく、強い真っすぐを正確に投げられることを中心に考えていってほしい。

少しヒールアップをして投げるタイプなだけに、走者を置いた投球にも不安がある。3回はツーアウトから4連打を浴びたが、満塁になってからは再びヒールアップをして投げていた。おそらく軸足にしっかりと体重を残して投げたいのだろう。この考え方は間違っていないし、個人的にもヒールアップは反対ではない。しかし、走者を出したときは別で、クイックをしてもしっかりと軸足に重心が乗るようにして投げられるような改善が必要だと思う。

2本のホームランは、いずれも真っすぐを狙い打たれたもの。1本目の辰己には、変化球が2球ボールになり、真っすぐを5球続けて打たれ、2本目の浅村も変化球が2球ボールになった直後の真っすぐを打たれている。対戦する打者も「変化球でストライクが取れない」と思われたのだろう。

真っすぐの威力と精度。走者を出したときのピッチング。変化球の精度。これらの課題をちょっとでもレベルアップさせるだけで「勝てる投手」になる資質は開花すると思う。

ピッチングとは関係ないが、少し気になったのが試合が終わってもいないのに笑顔が多いこと。古い考え方かもしれないが、勝負師というのは喜怒哀楽を見せない方がいい。阪神にはヘラヘラする選手が多いが、そういった選手で一流になった選手は少ない。真剣に、そして必死に野球と向き合い、レベルを上げてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

阪神対楽天 2回裏阪神無死、先制の左越え本塁打を放った大山(右)を笑顔で迎える西純(撮影・岩下翔太)
阪神対楽天 2回裏阪神無死、先制の左越え本塁打を放った大山(右)を笑顔で迎える西純(撮影・岩下翔太)