オリックス山下の状態は良くなかった。立ち上がりからカーブが決まらず、ストレートも操れていなかった。だが、1プレーが立ち直るきっかけになった。2回2死一、二塁で、ロッテの二塁走者・田村が捕手森のけん制に飛び出して刺された。森は直前にミットを外に構えており、狙っていた。ピンチを脱した山下は、3回以降、カーブが決まりだした。

1つのきっかけで試合中に修正できるのは、いい投手の証し。何より、高卒3年目でデビューから10試合連続5イニング以上。「立派」の一言に尽きる。間違いなく新人王の筆頭候補だし、99年の松坂(西武)、上原(巨人)以来となる新人王&最多勝のダブル受賞も見えてきた。

それだけの逸材だからこそ、状態が良くない時にどう抑えるか、思うところを指摘したい。この日は、いつもよりカーブの割合が多かった。悪い山下をなんとかしようと、カーブで投球の幅を広げたい森の意図が伝わってきた。カーブを、どううまく使うか苦心していたように映った。しかし、山下ほどの投手であれば、悪い時でもカーブではなく、ストレートをどううまく使うか考えた方がいい。

対照的な場面が5回にあった。1死一塁で友杉に対し、カウント1-2からボールになるカーブで空振り三振。直前に力を入れたストレートでファウルを奪ったのが効いていた。だが、続く中村奨には初球から続けたカーブを見逃され2ボール。3球目からストレートを続けたが、四球で歩かせた。

友杉にはストレートをうまく使えたから、カーブが生きた。反対に、中村にはストレートも、カーブも生かせなかった。簡単にカーブを見逃されないようにするにはどうするか。状態が悪いなりに、ストレートをどう使うかを覚える必要がある。そうすれば、もっと良くなるはずだ。

2月のキャンプで捕手の後ろから投球を見た。自分が受けていたらと想像したら“圧”を感じた。捕手でも感じるのだから、打者はなおさらだろう。それだけの圧を感じさせた投手は、現役時に受けた中では川上憲伸、打席ではダルビッシュを思い出す。山下は将来、間違いなく日本球界を背負って立つ投手。いずれ球種も増えるだろうが、現状ではやはりストレートが軸。繰り返しになるが、状態が悪い時でも、ストレートを生かすピッチングができれば、投球内容にさらに磨きがかかる。(日刊スポーツ評論家)