今季2度目の先発をした佐々木が、ポテンシャルの違いを見せて勝利を挙げた。課題の球数は7イニング111球で2失点。序盤はフォークで空振りが取れず苦しんだが、4回以降はスライダーを軸にしたピッチングにモデルチェンジ。4回以降の4イニングだけで、7奪三振のパーフェクトピッチングだった。

今季にかける思いの強さなのだろう。初回と2回はフォークの落ちが悪く、オリックス打線に苦しめられた。長いイニングを投げるため、真っすぐの力をセーブして投げているのだろう。真っすぐの腕の振りが悪くなれば、フォークは落ちにくくなる。苦しいピッチングになったが、真っすぐの力はセーブしたまま、スライダー中心の組み立てに変えた。それだけで抑えてしまった。

7回1死から8番の福田に対し、今試合のMAX158キロをマーク。次の球も157キロをマークしたように、序盤が150キロ台中盤だったことを見れば球速を抑えて投げていたのは明らかだった。オリックス打線がフォークを振ってくれなくても、真っすぐで抑え込む力勝負は選ばなかった。体の負担を少しでも減らしながら長いイニングを投げ、中6日のローテーションを守ろうとする決意の表れだったと思う。

昨年オフ、ポスティングでのメジャー移籍を希望し、越年していた。そんな佐々木に対し「登板間隔を短くして投げられない。アメリカでは通用しないだろう」という声が上がっていた。本人も耳にしていただろう。そんな声に対し、佐々木なりに長いイニングを投げるための投球を実践したのだと思う。

ただ、このスタイルで今シーズンを乗り越え、ローテを守り続けられるかは分からない。今試合でもはっきりしたが、真っすぐの力をセーブすると、右打者はフォークを空振りしてくれない。この日はスライダーにシフトチェンジして抑えたが、スライダーだと左打者は空振りしてくれなくなる。今試合のトータルでも、右打者でフォークを空振りしたのは7回2死からの安達の三振だけ。それ以外でフォークで空振りを取ったのは5球で、すべて左打者だった。

極端なのは私が見る限り、左打者に対してスライダーで空振りを1つも取れていなかった。こうしたデータは各チームに蓄積されるし、極端な傾向が出れば、打者も慣れるのが早くなる。やはりセーブしながらでも、力のある真っすぐを要所で交ぜていかないと、プロの打者は抑えるのが難しくなっていくと思う。

日程的に毎週日曜に投げる佐々木は、相手球団のエースと投げ合わない確率が高いカード3戦目。それだけにロッテは、佐々木の先発する試合は落とせない。佐々木VSパ・リーグの打者。楽しみな勝負を期待している。(日刊スポーツ評論家)

ロッテ対オリックス ヒーローインタビューを終えファンに手を振り引き上げるロッテ佐々木(撮影・滝沢徹郎)
ロッテ対オリックス ヒーローインタビューを終えファンに手を振り引き上げるロッテ佐々木(撮影・滝沢徹郎)