他国と比べ、日本野球が圧倒的に優れているのは「機動力」だと断言できる。ただ、国際大会ではボークの規定が日本より甘く、思うように生かせない部分がある。それでも優位な“武器”である以上、なんとか有効に使えるようにしなければいけない。それが今試合では有効活用ができず、逆に相手に機動力で付け込まれてしまった。
試合は中盤まで0-0のしびれる展開になった。そして迎えた5回裏だった。鈴木が四球で1死一塁、クリーンアップを迎えた。ここで不調の近藤とはいえ、送りバントは考えにくい。しかし3番手で登板しているタウンゼントのクイックのタイムは1・5秒台。鈴木の走力なら盗塁できるタイムだった。
絶好の盗塁チャンスだが、ボークの規定が甘い国際大会で走るのは勇気がいる。本来、速いけん制の投げられない左投手は、走れる選手にとっては走りやすい。しかし、ボークの規定が甘いと、特に左投手からスタートは切りにくくなる。鈴木は「いつでも走っていい」というグリーンライトが与えられていたのかもしれないが、ボーク気味のけん制を警戒して走れなくなっていた可能性は高い。その場合、ベンチが責任を持って「走っていいぞ」と鈴木に伝えて背中を押してやってよかった。結局、ノビノビと投げられ、無得点に終わった。
機動力を使えない日本に対し、逆に機動力絡みのプレーで痛恨のミスを犯してしまった。4回裏2死満塁で大谷を打席に迎えた。絶好のチャンスの場面で二塁走者の牧が捕手からのけん制でアウト。タイミングは微妙で、ビデオ判定も認められない点に不満は残ったものの、この状況では絶対にやってはいけないミス。打者は大谷で外野は後ろに守っているし、二塁走者はそれほど大きくリードを取る必要はない。しかもけん制前には捕手はミットを横に動かし、ショートにけん制する合図を送っていた。これを見逃し、けん制でアウトになってしまった。
そして6回表にも機動力で隙を突かれた。1死二塁で投手は三盗を狙いやすい左腕の隅田だった。とはいえ、隅田はしっかりとクイック投球していた。本来、左腕とはいえ、投手が警戒してクイックしていれば三盗は狙えない。しかし走者は同じ投げるタイミングを計って、第2リードを大きくとっていた。これだけ第2リードを大きくとっていたのだから、捕手、セカンド、ショートの誰かが投手に警戒するように教えなければいけない。だが、無警戒にして見事なスタートを切られ、サードへの送球が悪送球となり先制点を奪われてしまった。
試合は吉田の逆転2ランでひっくり返した。苦戦したとはいえ、地力の違いを見せたとも言える。8回、代走の周東は、今大会2個目の盗塁を決め、佐藤のタイムリーで3点目を奪った。機動力を使った攻防をもう1度見直し、不振の選手と好調の選手の起用法をリセットしてもいい。この後の戦いを優位に戦えるように整備し、連覇を目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)




