広島が9日からの阪神3連戦(マツダスタジアム)の中止を発表した。豪雨被害が大きい中で仕方ない措置だと思う。6日からの巨人3連戦はチーム取材で東京にいた。ニュースで広島県内に犠牲者や不明者が多数出ていることは当然知っていたが、距離的なこともあり、正直言って、災害の実感がさほどなかった。

 8日夜、新幹線で広島に戻ると身近なところに影響を感じた。住んでいる広島市中区のコンビニで、おにぎりやパンが品薄。店員は「昨日から入荷していない。普段は1日2、3回入ってくるのに」と嘆いていた。同じく広島に戻った選手からも「大変な思いをされている方が多い」との声。あらためて事の重大さを認識した。

 本来は3連戦の初戦だった9日は、中止試合の入場券払い戻しが開始。列の中に、呉市からフェリーでマツダスタジアムに来た男性ファンがいた。「カープを応援したいけど、次はいつ来られるかどうか」との嘆きが胸に響いた。被害の大きな地域の1つである同市は交通網が途絶えて“陸の孤島”となっていた。

 広島松田元オーナーは中止決断に至った経緯を説明する中で、対戦相手だった阪神球団に感謝した。ここまで12試合を雨天中止で流していたからだ。

 「ウチより阪神のことを心配した。ものすごい迷惑をかけるんじゃないかと…」。中止を検討していた8日朝、阪神の揚塩(あげしお)球団社長に連絡。理解を得られたという。

 広島は前半戦だけで中止の未消化が9試合も発生した。阪神も9月以降の超過密日程が予想される。災害は誰の責任でもない。日本野球機構(NPB)には、ポストシーズンの日程見直しも含め、柔軟な対応を求めたい。【広島担当 大池和幸】

被害を受けた広島県安芸郡坂町で、家の中から発見された高齢女性の遺体を運び出す救急隊(2018年7月8日撮影)
被害を受けた広島県安芸郡坂町で、家の中から発見された高齢女性の遺体を運び出す救急隊(2018年7月8日撮影)