ロッテの契約更改が終盤に差しかかる。活躍した選手も、苦しんだ選手も。表情もいろいろだ。二木康太投手(27)は後者だろう。

「シーズン開幕して2試合はそんなに悪くなかったけど、そこでけがをしてしまって…けがが治ってからもなかなかいい時の感覚が戻ってこなかったので」

真顔で、声色も低め。今季は2勝のみ。来季は10年目。中堅投手の域だ。数週間前にも巻き返しへの思いは聞いていた。契約更改会見はさほど深掘りせず、そっと質問を止めた。

背番号18。スピードガンに際立つ数字は出ないが、タイミングの難しさゆえ、好調時は空振りでも見逃しでも三振を奪える投手だ。何より、本拠地ZOZOマリンでの先発が映える。シンガー・ソングライター秦基博さんの「Halation」が登場曲。壮大で“エモい”曲は、マリンの雰囲気にぴったりだ。

私もHalationが流れる時はいつも、記者席でマスクを着けて熱唱している。現キーだとけっこうきつい。一度、担当記者ツイッターでロッテファンにアンケートを取った。「二木投手が先発でHalationが流れている時、客席でどうしていますか?」。投票数1365票で、結果は以下。

◆割と熱唱=32%

◆鼻歌くらいは=40%

◆特に何も=28%

というわけで一度、二木に登場曲への思いを尋ねたことがある。

「すごく、自分の中でもテンションの上がる曲ではありますし、投手の…何て言うんですかね、登場する、マウンドに上がる上でぴったりの曲だと思うので。イントロもすごくいいですし、サビに入るところもすごくいいです。今後変えるつもりもないです。すごくいい曲だなと思います」

すごくいい、と何度も繰り返す。子どものころから高校野球が大好きだったんです-。そう回想した。09年夏の甲子園で、テレビ朝日系「熱闘甲子園」でHalationがテーマソングに使われた。当時14歳の二木は毎晩のように聞き、大好きになったという。

15歳になった翌年8月。一気に背が伸びたころ。「すごく暇だったので」と鹿児島情報高の野球部体験入部へ、電車を乗り継いで向かった。同校へ通っている姉からの誘いだった。投げた。監督から誘われた。

「乗り換え時間もけっこう、都会みたいにどんどん電車出てるわけじゃないので。1時間半とか、長い時には2時間かからないくらいとかはあるかもしれないです」

桜島を眺め、電車に揺られる青春時代。甲子園には及ばなかったものの、長い線路はプロ野球につながっていた。

もう10年。細かった高校生はたくましい肉体になった。二木を見ていると、自分の高校時代を思い出す。私事ながら、秦基博さんと高校時代にクラスメートだった。一緒に学食に行ったり、ゴムボールで野球をした記憶がおぼろげながら残る。音楽の授業、校歌を歌うと抜群の美声だった。

引き寄せ合うものがあるからこその選曲なのだろうか。穏やかで誠実。二木と、記憶の中の秦さんは、雰囲気がとても似ている。秦さんも、二木がHalationを登場曲にしていることは知っていた。来季は何度も、エモい名曲を響かせてほしい。「吉井さんが監督っていうのはまだ全然実感ないですけど、何とか本当に、力になれるように」。巻き返す薩摩隼人の心意気を見たい。聴きたい。【ロッテ担当 金子真仁】