元気に投げる姿が、個人的にもうれしかった。阪神高橋遥人投手(28)が893日ぶりとなる実戦復帰を果たした。17日ウエスタン・リーグ、オリックス戦(鳴尾浜)で先発し、1回を1安打無失点。「入団してから1回も見たことない人もいると思うので、普通に珍しいだろうな。珍しいからみんな応援してくれてるかなという感じですかね。ありがたいです」。チームメートに感謝する言葉も、なんとも高橋らしい言い回しだった。

バットにボールが当たらない…。高橋の直球を見て、何度も本気でそう思った。左肩のコンディション不良で出遅れた20年は、シーズン初登板初先発の8月6日巨人戦で7回3安打無失点11奪三振。上肢のコンディション不良があった21年は、復帰2戦目の9月26日中日戦で2戦連続2ケタとなる13奪三振でプロ初完封勝利。まさに救世主のような投球だった。

度重なるケガを乗り越え、そのたびに強くなって戻ってきた。今回も左肘や左肩などにメスを入れての復帰。投げたくても投げられない時間を過ごしたから、投げられる喜びを知っている。20年のキャンプの時に「投げられない時のことを考えたら、すごく楽しく出来ています」と話していたのを、今も覚えている。

それでも今回の復帰登板後、「楽しさを感じる余裕は?」と聞かれると「余裕はなかったです」と答えていた。柔和な表情の裏にある、完全復活にかける決意を勝手に感じた。

1球で空気を変える左腕が戻ってくるのを誰もが待っていた。次は1軍の舞台で。「取材得意だと思うんだけどな…普段はめちゃくちゃしゃべります」と明かしていた高橋らしいトークを、お立ち台で聞ける日を楽しみに待ちたい。【阪神担当 磯綾乃】

4月17日、阪神対オリックス 試合終了後笑顔を見せる高橋(左)。左は和田2軍監督
4月17日、阪神対オリックス 試合終了後笑顔を見せる高橋(左)。左は和田2軍監督