サステナビリティ。

近頃よく耳にする言葉は、日本語に直訳すると「持続可能性」。18年に改訂された最新の第7版広辞苑によれば「現在の世代の活動が、将来の世代の活動を損なうことなく持続できるかどうかを表す概念」とある。

少々フワッとした概念だが、3つの柱がある。1つ目が経済発展、2つ目が社会開発、そして環境保護だ。

今回は「環境保護」の観点から、「サステナビリティと品質保持の両立」に着目した。

「サステナビリティ」と「品質保持」。これらをマッチさせることは簡単ではない。例えば、プラスチックゴミ削減のために「紙ストロー」が登場した。だが、どこか「紙っぽさ」が口に残り、商品の味を損ねてしまうという意見もある。

野球界はどうか-。

例外なく、野球界もデリケートなボールの取り扱いなどで環境保護に動いている。

前提として、ボールは湿気(水分)を過度に含むと重くなり、打った時の飛距離も落ちる。また、紫外線によって劣化を招く。NPBで使用しているボール(統一球)はミズノ社製。保管環境としては、個包装されたボールが1ダースずつ箱に保管、収納され、供給されている。

この保管環境に2つ、変化がなされた。

まず22年、ボールを包装するフィルムが変化した。

21年までボールはアルミ箔(はく)に包まれ、プラスチック製の透明フィルムで個包装されていた。

だが22年シーズンから、TOPPANが開発した「GL BARRIERR(ジーエル バリア)」というフィルムを採用。これによってアルミ箔(はく)は不要となり、ブルーのフィルムの中にボールが“裸”の状態で個包装されることとなった。

TOPPANのホームページによると、「GL BARRIERRは、独自のコーティング層と高品質な蒸着層を組み合わせた世界最高水準のバリア性能を誇る」と説明している。統一球の包装について問い合わせると「従来のフィルムよりも湿気と光は通さない」と回答が得られた。

さらに、環境面でも従来比で二酸化炭素の排出量を年間約1・7トン削減できる見込みだ。

つまり、フィルムの変更によって環境保護はもちろん、ボールに対する湿度の影響も従来以上に抑止しているということになる。

2つ目の改革は、今季から個包装されたボールを収納する箱が、単色印刷の段ボールへ変更。昨季までは、カラー印刷し、コーティングをした塗工紙だった。

これによって紙箱を作る際に排出される温室効果ガスを、従来より年間で約13・9トン(約66%)削減することができるという。また、紙箱の四隅を金具で止めていたが、その金具も不要となった。

段ボール製でも湿気(水分)は問題ない。全国段ボール工業組合連合会は「紙でも段ボールでも、一般的に含水率は7~15%で推移する。15%というのは梅雨のジメジメしている時。段ボールの方が含水率の上昇する時間は早いが、ボールに影響を及ぼすことはない」と説明した。

フィルムと外箱。この2つの変更で「環境保護に好影響を与えた上で、ボールの品質は従来よりも守られている」ということになった。【黒須亮】

左が23年までの外箱、右が今季から採用された段ボール製の外箱(ミズノホームページより)
左が23年までの外箱、右が今季から採用された段ボール製の外箱(ミズノホームページより)
左が従来の統一球の包装、右が23年からGL BARRIERRを採用したフィルムで包装された統一球(ミズノホームページより)
左が従来の統一球の包装、右が23年からGL BARRIERRを採用したフィルムで包装された統一球(ミズノホームページより)