お笑いコンビ、さまぁ~ずの三村マサカズ(54)が、ゆる~く、熱く、侍ジャパンにエールを送った。各界の一流に聞く「侍を語ろう」。お笑い界屈指の野球ファンが、迫る真夏の東京オリンピック(五輪)へ、愛情たっぷりにトークを展開した。上下2回でお届けする。【取材・構成=広重竜太郎】

笑顔でポーズをとる三村マサカズ(撮影・河田真司)
笑顔でポーズをとる三村マサカズ(撮影・河田真司)

三村がメンバー表に目を移らせた。16日の代表発表前に行われたインタビュー。日刊スポーツが予想した24人の侍の名をたどる。「完全に(五輪を)やるという宣言がない中で『やるんだろうなぁ』ぐらいの感じ。なかなか熱が上がりにくいですね」。インタビューの第一声で語っていた。野球ファンの誰もが思い描く、自分なりの侍ジャパン。一進一退のコロナ禍でこの日まで考えたことはなかった。だが芸能界でも指折りの野球愛がうずき出す。「今日までこんな想像をしていなかったので、初めて想像しているけど…。面白いですね」と夢想が始まる。

三村 シビアな話だとジャイアンツからは(3人で)これぐらいだろうなと。岡本は1回スランプに入っちゃうと抜け出しにくいところがあるから冷静に考えると村上。村上の方が打撃に関しては確実性がありますから。悔しいですけどね。岡本のホームランを見てみたいんですけど。

「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019」 第2戦 日本対メキシコ 8回裏日本1死、村上宗隆は左前打を放つ(2019年3月10日撮影)
「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019」 第2戦 日本対メキシコ 8回裏日本1死、村上宗隆は左前打を放つ(2019年3月10日撮影)

大の巨人党。しかし“三村ジャパン”はフラットな視点に立った。最も期待する選手に燕の怪物を押す。

三村 本来はジャイアンツの選手(を応援)なんですけど、今回は侍ジャパン。これ以上は打たないでくれと心の中では思っているけど、村上ですね。乗った時は抑える球がない。右投手だろうが左投手だろうが投げる球がない。敵として見てますから。侍ジャパンになったら味方だから、頼もしいなという感じです。

かつて大谷の活躍を喜ぶ一方で、阪神秋山が好投手と分かった時にも喜びを感じたという。野球への大局観がある。

三村 売り出し中の平良、栗林。自信を持って投げてもらいたい。2人とも連続無失点の記録を作っていますよね。でも五輪はまた空気が違うから、そこで打たれてヘコまないこと。1発ぐらい打たれますよと。本当は五輪前に1回は失点ぐらいしてもいいのかなと逆に思っちゃう。変にガチガチに記録に守られながら五輪に行くのではなく「そりゃそうだよな」と。

だから10日のソフトバンク-広島戦で見たワンプレーも前向きに捉えられた。

三村 栗林が初めてボークを経験したとニュースが入ってきたが、一通り全部経験しておいた方がいいぐらいに思う。負け投手や、何ならサヨナラ負けも経験したりして五輪に臨んで欲しい。

言葉通り、インタビュー後日の13日オリックス戦で神話を築き続けたルーキー守護神はサヨナラ負けを初体験した。三村が身を置く、お笑いの世界も“ボーク”や“サヨナラ負け”と背中合わせだ。

三村 お笑いもスベった後が大事? そうなんですよ! 一通り経験していると「あ、大丈夫だ。これぐらいの滑り方は影響がない。次は取り返せるから」となる。経験ですよね、やっぱり全部が。

野球とお笑いの親和性。“関東一のツッコミ”と称された芸人にあえて聞く。野球のポジションでツッコミと似ているのは-

三村 キャッチャーですよね。お笑いの役割の主役はボケの人ありきですから。キャッチャーはピッチャーが投げやすいように、ボケの人がボケやすいように常に見ている。

相棒の大竹一樹は剛腕な投手なのか。「…。今、本人が(同じ楽屋に)いますからね。非常にやりにくい場所になっちゃいましたけど(苦笑い)」。インタビュー途中に楽屋入りした大竹の気配を感じながら、一呼吸置く。

三村 でもそうなんでしょうね。例えばキャッチャーがサイン出しますが、ピッチャーが首を振り続けたら相手の好きな球を投げさせざるを得ない。ボケたい時にボケて、ボケたくないボケはやらないのはピッチャーと似ているんじゃないですか? 大竹さんもボケたくないボケはやらない。こっちが「今、チャンス! やれ!」と思ってもやらないですよね。「打たれる」「スベる」という予感がするんでしょうね。キャッチャーからすれば「今、これを言えば絶対にウケるんだけどな」というのがあるんですけどね。「ウケるのは知っているけど、別にここで言いたくないんだ」みたいな。そこはお笑いに似ているんじゃないですか。

確固たるポジションを築いても2人は同じ楽屋を利用することで知られる。投手と捕手が密にコミュニケーションを重ねるように時間を共有する。

三村 無理やりこじつけましたよ(笑い)。野球とお笑いを当てはめたことがないんで。別腹ですよ! ハハハ。(敬称略=つづく)

◆三村マサカズ(みむら・まさかず)1967年(昭42)6月8日、東京都生まれ。88年、高校時代からの親友の大竹一樹とお笑いコンビ「バカルディ」結成。00年、テレビ番組で海砂利水魚(現くりぃむしちゅー)と3段跳び、重量挙げ、パン食い競走の3種目競技で負け、罰ゲームとして「さまぁ~ず」に改名。半年間限定の企画だったが、売れて定着したため、そのまま名乗っている。「モヤモヤさまぁ~ず2」(テレビ東京系)「さまぁ~ず論」(テレビ朝日系)など冠レギュラー番組を持つ。