23年ドラフトで多くの選手が指名された独立リーグには、今年も好選手が。BC・神奈川の最速151キロ左腕の安里海投手(24)は、NPB入りを目指して社会人の日立製作所を昨年11月に退社し、独立リーグに舞台を移した。

ドラフトファイル:安里海
ドラフトファイル:安里海

野球選手には誰でも、頑張る理由がある。安里にとっては、そのうちの1つがけっこう独特だ。

「年越しは絶対、沖縄に帰ります。高校の時から、そのために野球頑張っているようなもの」

中学を出て、関東での野球を選んだ。久々の帰省には心躍る。懐かしい香り、琉球音階の響き。生まれ育った沖縄・美東(びとう)は音楽の街だ。「友達にも音楽やってるやつが多くて、一緒に遊びで。僕も曲作ったり、ウクレレやったり」。友人宅に集まってわいわい語らっていると、いつの間にやら午前8時や9時に。初日の出の記憶も最近はない。

思い入れのある1月1日、今年は安里は沖縄にいなかった。神奈川でもない。夏真っ盛りの南半球、オーストラリアにいる。BC・神奈川への入団が決まると早々に、球団からオーストラリアで行われるウインターリーグへの派遣を提案され「行かせてください!」と迷わずキップを手にした。

シドニーのチームには、夢見るNPBの選手、ロッテ中森や池田も派遣された。「1年を通して疲労がたまらない投げ方やアップの仕方や、疲れの抜き方とかを間近で学べたらいいなと思います」。NPBで活躍したいから、名門の日立製作所を昨秋、退社した。

レベルが高い。社業との両立。実戦も限られる。

「入社1年目に不調で投げられない時にいろいろ考えることもあって。社会人は一発勝負も多いので調子の波があると投げられないとかもありますし、体が元気なのに自分の力が出せないというところにどうなのかなというのが」

1カ月で10イニング少々の時も-。一方でBCリーグは年間約70試合。NPBでの活躍を夢見る立場として魅力的だった。南国で体をならし、24年は懸命に投げ続ける。

目標を聞くと「年間10敗はしたくないなーと…」と意外な答えが来た。先発志望。名門チームを歩んできて、白星は打線との兼ね合いでもあることを熟知する。それでも誓う。

「負け越したくない、負け越さないというのは自分の中で決めて。独立1年目でNPBに行くことに全振りしてやるのは間違いないです。強い覚悟で日立さんを辞めてきたので」

昨秋のNPBドラフトでは6人の独立リーガーが支配下指名を受けた。育成指名も含めれば23人。高まる注目度。日焼けして帰ってくる安里にも、強い追い風が吹く。【金子真仁】

社会人・独立リーグ 今年の主なドラフト候補
社会人・独立リーグ 今年の主なドラフト候補