今年は「延長戦なし」のルールが設けられ、選手の起用法が例年とは異なってきている。投手では勝ちパターンの投手の登板機会が増え、野手ではチーム差はあるものの、多くの選手を使うような積極的な交代が目につく。ここで気になったのが、すでに全イニング出場中の選手がほとんどいなくなっていることだ。

延長戦がない分、1試合ごとの負担は減るので全イニング出場が従来よりやりやすいのでは? と思うかもしれない。しかし、選手枠が増えたこともあり、大差でリードの展開では交代したり、1点を争う終盤、特に今年の9回はもう打席が回らないので、出塁したら代走が出たり、というケースは少なくない。開幕から1カ月を経過して全試合に出ている選手は、セ・リーグ19人、パ・リーグ23人いるが、全イニング出場の選手は両リーグで6人だけ。セ・リーグではすでに菊池涼介(広島)しかいない。

今季から全試合出場を続けているパ・リーグ選手
今季から全試合出場を続けているパ・リーグ選手
今季開幕から全試合出場を続けているセ・リーグ選手
今季開幕から全試合出場を続けているセ・リーグ選手

「延長10回まで」だった昨季を見ても、全試合出場はセ・リーグ4人、パ・リーグ6人いたが、全イニング出場は0人。制限イニングが短いほど、達成は難しくなるのかもしれない。達成者0人は93年以来27年ぶりだったが、90年代からは松井秀喜(巨人)金本知憲(阪神)鳥谷敬(阪神)秋山翔吾(西武)など「鉄人」と称された選手たちが記録を達成。毎年のように誰かが達成していた近年の方がむしろ珍しかったといえ、1試合も休まず途中交代もなしで出続ける難しさを再認識させられる。

90年以降フルイニング出場を記録した人数
90年以降フルイニング出場を記録した人数

例年より少ない120試合だった昨季に達成者が出なかっただけに、今季も達成者ゼロとなるかもしれない。2年続けて0人だと、70~71年以来50年ぶりだが、今年は2年ぶりに達成者が出るか。現在継続中の6人がこのまま完走できるか、見守っていきたい。【多田周平】