1カ月に及ぶキャンプは、いよいよ打ち上げを迎える。果たして合格点のキャンプだったのか? 監督の岡田彰布が見せた渋い表情が、答えを表している。

プロの世界、やはり甘くはない。岡田が期待した新戦力の出現はなかった。特に野手に関しては顕著だった。スポーツ新聞で大きく扱われた井上、野口、ルーキーの福島は1軍定着へのアピールは不発。前川だけが生き残るという厳しい結果を迎えた。

投手陣では湯浅が2軍に。岡田は2024年シーズンでのクローザーとして計算していただけに、これは大きなマイナスの誤算だった。それでも門別、岡留と若い力の台頭があり、野手に比べれば随分マシと評価できる。

その新戦力、ここにきて高評価を受けているのが新外国人のゲラである。実戦登板の段階にきて、結果を出し、一気に新クローザーも…との声が上がっている。岡田はゲラについて「スピードがあり、コントロールに苦しむこともない。ピッチング以外のプレーもそつなくこなし、そら使えるピッチャーやろ」と1軍戦力を認めている。

湯浅が計算外になった時点で、今年もクローザーは岩崎に。そこに現れたゲラ。岡田や安藤、久保田の投手コーチはどう判断するのか、それは連覇への大きなポイントになる。

クローザーとは? の問いに岡田は昔からこう返してきた。「三振を取れること。精神的な強さがあること。連投がきくこと」などで、それに合致したのがかつての藤川球児だった。岡田は藤川のスピンのきいたストレートに早くから着目。力でねじ伏せることができると判断し、2005年シーズンのリーグ優勝に結び付けた。その前年は久保田をクローザーにあてたが、それも「力があって、連投、イニングをまたいでもいけるスタミナがあった」という理由を語っていた。

クローザーを担うには、それなりの条件が必要。昨年の岩崎は確かにそれを満たしていた。彼には藤川並みのスピードボールはないが、独特の投球術がある。さらにコントロールを乱すことがほとんどなく、テクニックで相手を封じてきた。なによりキャリアがある。少々のことでは動じることなく、ドンと構えることができた。昨年のセーブ王のタイトルは伊達ではない。

一方の候補、ゲラには新鮮味があり、持ち味は160キロ超えといわれるスピード。それでいて力任せではなく、制球も低めに集める良さを見せている。三振を取れる投手。岡田がゲラをクローザーにするとすれば、これが根拠となる。

理想はツープラトンシステムかもしれない。岩崎の勤続疲労を考慮し、ゲラとの使い分け。これが可能なら長いシーズン、乗り切れるというものだが、やはり岩崎には実績に裏打ちされた「プライド」があるはず。クローザーはひとり。それくらいの気持ちがなければ、この過酷なポジションは全うできない。

これから先、1カ月後をにらみ、クローザー問題はどんな展開になるのか。岡田は実績やプライドを重視する監督である。それだけに岩崎には全幅の信頼を置きつつ、想定外に対応できるような準備も怠らない。守りの野球で連覇を…。根幹を担うクローザーは岩崎かゲラか。首脳陣のジャッジははたして…。【内匠宏幸】(敬称略)

23日、ブルペンで投球練習を行う阪神岩崎優
23日、ブルペンで投球練習を行う阪神岩崎優