<イースタンリーグ:DeNA4-5ロッテ>◇11日◇横須賀

ロッテのドラフト5位、高卒ルーキー・金田優太内野手(18=浦和学院)のショートをリポートする。

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ファームリポートを書いていると、ファンの皆さんのこんな声をたびたび聞くことがある。特に若い選手、高卒ルーキーに向けられた声援だ。「まだ18歳、まだ1年目、今はどんどん失敗して、たくさん経験すればいいよ」。

ファンの声、温かい声援は、本当にありがたい。ひいきチームの若手選手、アマチュア時代から追いかけている選手に向けた、希望あふれる言葉だ。

もちろん、選手は競争の中にいる。18歳でも25歳でも、同じ土俵で比べられ、序列をつけられる。厳しい現実があるからこそ、応援してくださるファンの声は選手の心に届き、練習への活力になるのだとつくづく思う。

私は評論をする立場なので、成長するための改善点を、目の前で起きたプレーと、そこに私の経験を照らし合わせて解説する。

この試合、私がずっと楽しみにしていた18歳のショートを、ようやく肉眼でじっくり見ることができた。

浦和学院の金田は、甲子園でのバッティングが印象に残っていた。ミート力がとても巧みだった。高卒でプロに入ってくるレベルと感じていたが、ドラフト5位でロッテに入団。そして今年、ショートで経験を積んでいる。

私がここまでチェックしてきた中では、ショートとして使われている。そこには球団として金田を打てるショートに育てたいというプランが見える。バッティングに磨きをかけて、不動のショートに育てたいのだろう。

この試合では4打数無安打。バッティングはまた次回じっくり解説することにして、今回は守りについていくつかの課題を指摘したい。

1回裏、蝦名の打球はわずかに三遊間寄り。それほど強い打球ではなかった。金田の重心は後ろにあり、スムーズに1歩目がでなかった。若干遅れた1歩目はほぼ真横。前に踏み出すべきところだった。

重心が後ろにあるため、そこから前傾姿勢になり動き出すから、時間もかかる。重心が前にあればスムーズに前に出られる。速い送球もできる。

しかし、出だしで遅れ、真横にステップしたため、捕球してノーステップでの送球。ツーバウンドとなり、それほど強肩ではない金田の肩では、ギリギリアウトだった。

あの打球ならば、しっかり前に出て、捕球から送球までリズム良く投げ余裕でアウトにしてほしい。1つの打球で学ぶことはたくさんある。

重心のかけ方の違いで、一呼吸始動が遅れる。さらに踏み出す方向を間違えば、さらにアウトの可能性は低くなる。アウトという結果よりも、ひとつひとつの動きをしっかり検証しながら、体に染み込ませるよう、試合のなかで反復を心がけることだ。

さらにこの回2死から知野が出塁。けん制で飛び出し一、二塁間での挟殺プレーとなった。一塁手が走者を追い、金田がボールを受けたが、この時も捕球体勢で重心は後ろにあった。

ゆえに止まって捕球してから、走り出すために一発でアウトにできない。挟殺プレーはいかに素早くアウトにするか、それが鉄則。

このケースでは走者が一塁だけだったが、これで三塁に走者がいれば、挟殺プレーに入りながら三塁走者もケアしないと。難度は数段高まる。

この日のようなシンプルなケースで、余分な時間がかかることをまずは自覚して、修正すべき捕球姿勢を見直してほしい。

7回、DeNA森のショート後方のフライを、外野方向を向きながら追いかけ、内野へ向き直って捕球しようとして、目測を誤り二塁打とした。向き直った時、落下点が金田の右にあり、グラブが届かなかった。

この後失点して1点差とされたが、ここで沈んだ様子を見せないところが、非常に光った。マウンドに内野手が集まった時も、帽子のひさしに手をやって「すいません」というジェスチャーをしていた。

ヒットだが、実質的にはアウトにすべき飛球。記録には残らないミスだが、金田は前向きにプレーを続けた。声をよく出し、捕手がワンバウンドを体で止めると「ナイスストップ」と声を出していた。

DeNAのショート森も、金田と同様にとてもいい声を出していた。私には経験があるから、こういうショートの価値はよく分かる。

野球は、特に内野は心をひとつに、意識を共有してアウトを確実に奪っていく。こういうショートがいると、雰囲気が保たれ、試合はほどよい緊張感の中で進めていける。

自分のミスで下を向いたり、沈んだムードを周囲に見せたり、声がでなくなったりしては、タフなショートには育たない。重心のかけ方は反復すれば直るが、こうしたメンタルは実は生まれ持った才能の部分が大きいように感じる。

課題はある。同時に要のショートになり得る素質を備えている。試合でさまざまな打球を処理して、精度を高める。そこに一切の妥協なく、上を目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)