花咲徳栄・韮沢雄也
花咲徳栄・韮沢雄也

ドラフト会議が10月17日に迫り、寮の6人部屋が夜な夜なざわつき始めた。「どこの球団だとか、みんないろいろ予想してくるんですよ」と苦笑いするのは、花咲徳栄(埼玉)・韮沢雄也内野手(3年)だ。

自身の長所を「周りに流されないこと」と言うが、今回ばかりは事情が違うよう。「どうなるんだろうと思ったら、少し寝付きが悪くなりました」。1学年先輩の日本ハム・野村佑希内野手(19)からは昨年のドラフト直後に「直前はめちゃくちゃ緊張するよ」と言われており、実際にその通りになっている。

11球団から調査書が届き、その多くの球団スカウトと面談した。指名は有力とみられる一方、過去には同じ状況で指名漏れした選手もいるのがドラフトの厳しさだ。「あとは信じて待つしかないんですよね」。クラスメートたちが受験勉強や面接練習に励む中、もやもやした日々を過ごしている。

日刊スポーツをはじめ、ほとんどの新聞、雑誌からABC評価の「B」を付けられている。「B…かもしれないですね。自分は他の誰よりも飛ばすとか、誰よりも肩がいいとか足が速いとか、決してそういう訳ではないので」と冷静に受け止めている。

U18高校日本代表に選ばれ、世界の舞台でもまれながら「A」を間近で見てきた。「やっぱり石川(東邦)ですよね。右にも左にも長打を打てるじゃないですか。あとは森(桐蔭学園)。同じショートとして肩も打球への入りもすごいと思います」と認めつつ「でも、自分もそれなりに安打は打ってきました」と培ってきた技術への自信をちらっとのぞかせる。

夏の甲子園が終了してから、新潟・魚沼の実家には1度しか帰省していない。木製バットの振り込みなど連日、練習に励み、仲間のドラフト予想にドキドキしながら、夜が更けていく。「緊張しますけど、やっぱり、いいことを想像したいです」。韮沢の名前が呼ばれれば、これで花咲徳栄からは5年連続でのドラフト指名。2階での記者会見を終えて1階に降りると、100数十人の仲間が笑顔と大歓声で出迎えてくれる-。プロに進んだ先輩たちが見てきた「光景」を、必ず自分も目撃できると信じて、目を閉じる。【金子真仁】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

U18W杯で安打を放つ韮沢雄也
U18W杯で安打を放つ韮沢雄也