個人的な話で申し訳ないが幼少の頃からぜんそくに悩まされてきた。小学校高学年になっていったん落ち着いたように思えたが中学に入ると環境の変化が影響したのか悪化。高校時代は入院生活まで経験した。

当時の同級生から、のちに「いかにも病弱だったし、大人になれるのかなと思っていた」と明かされたほど。しかしぜんそくの研究、治療は進歩しており、おかげで50代になった現在、コントロールしながら普通に暮らせている。

そんな子どもの頃、スポーツ選手、タレントといった著名人がぜんそくだったという記事を読んだり、番組を見たりすると変な言い方だがとてもうれしかった。「あの人もそうだったのか」と思うと自分もなんとかなると思えたからだ。

ぜんそくといえば、以前は「小児ぜんそく」が有名で「成長すれば治る」と言われた。しかし最近は成人してから症状が出る人もいる。花粉症が重症化してなる場合もあるという。

西勇輝がキャンプを切り上げたときの理由がぜんそくと聞いて驚いた。プロ選手の場合、何らかのアレルギーがあるなど自覚していれば事前に対応しているはず。それだけに状態がよくないのかなと気になっていた。そして、今季初登板にも注目していた。

結果は虎番記者の記事にもあるように見事なものだった。6回のピンチで失点し、敗戦投手になったがこれはもう運の部類だろう。阪神の攻撃にしても、ひとつ間違えば逆転できていたかもしれないところで球界を代表する外野手・鈴木誠也に阻まれた形だ。

阪神は4安打、勝った広島が5安打の両軍合わせて9安打すべてが単打という結果が示すように投手力の戦いだった。広島は今季の強みである新人を組み入れた新しい勝利の方程式が成功したということだ。

阪神は今季、初黒星。しかし当たり前だがいつかは負ける。どんなチームでもそれは同じだ。この試合に限って言えば紙一重で勝敗が入れ替わっていてもおかしくなかった。指揮官・矢野燿大が「オレの中でこの敗戦は割り切れる」と言ったのは同感だ。

大事なのは結果が出なかった選手がそれを分析して次につなげること。それができれば1敗は問題ではない。西勇は元気に投げたし、ぜんそくを持つ子どもたちにその姿を見せられたことで納得すればいいと思っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)