先週の話だが9日に行われた村田諒太とゴロフキンによるボクシング世界戦はすさまじかった。承知の通り、壮絶な打ち合いの末、村田がTKO負け。白いタオルがセコンドから投げ入れられる瞬間も画面にハッキリ映っていた。

説明するまでもないがボクシングでタオルを投げ入れるのはレフェリーに「これ以上は戦えない。試合を止めてくれ」という意思表示だ。選手が負傷したり、大きなダメージを負ったりするのを避けるためだ。

そんなことを思い出すのは言うまでもなく阪神の負けっぷりに接しているからだ。バンテリン・ドームでも3連敗し、開幕17戦で1勝15敗1分けとなった。勝率6分3厘。そんなことはないと思うが、現状の勝率でシーズンを終えたら今季は8勝できるかどうか-という計算だろうか。

そんなバカな…と思いながらもなんだかドキドキする。ペナントレースにタオルを投げ込み「やめます」と放棄することができるなら-。本当にそんなことを思ってしまう展開だ。

指揮官・矢野燿大は打線改造を行ってきた。佐藤輝明が2番右翼でスタメン。キャンプ、オープン戦からの“競争”で勝ち取った4番打者の座を大山悠輔に明け渡した格好だ。結果は、その大山の犠飛による1得点だけに終わる。

「現状、機能しないんで何かキッカケがほしいというところで打撃コーチやみんなで相談しながらやったけど…」。矢野は虎番キャップたちにそう話したようだ。意図は分かるが、この結果に終われば、誰もいい気持ちはしない。

矢野は就任以来「決める」ことをせずにきたと思う。マルチ・ポジションを推奨、正捕手を据えることにも積極的ではなかった。打順はまずまず固定できたようにも見えたが、それでも結構、動かしてきた。それがいいのか悪いのか。方針は人それぞれだが、この状態になるともうバラバラ、どうしようもない状況に陥っているように見える。

余計なお世話だが矢野の体調が心配だ。おそらくしっかり眠れていないだろうし、食事もちゃんと取れているのだろうか。「今季限り」を宣言した以上、自分から「休みたい」とは言えないだろうし、真面目な話、フロントがタオルを投げ入れるタイミングはやってくるのか。とにかく少しでも復活するには甲子園の巨人戦で次の1勝をマークするしかないのだが-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 4回表阪神無死一塁、佐藤輝(手前)は二塁ゴロを打ち併殺を招く(撮影・前岡正明)
中日対阪神 4回表阪神無死一塁、佐藤輝(手前)は二塁ゴロを打ち併殺を招く(撮影・前岡正明)