「土佐のいごっそう」らしく、現役時代から快活なしゃべりだったのが指揮官・藤川球児である。監督になってからは重責もあるのだろう、あまり冗談ぽいことは言わなくなっている印象だ。そんな中、最近、少し面白いな、と思ったのは25日中日戦(バンテリンドーム)に勝った後のこと。こんな話だ。

その試合、3回1死一塁で打席は先発投手・伊原陵人に回った。ここで伊原は犠打を決められず、走者が入れ替わる形で2死一塁に。その後、1番・近本光司が二塁打を放った。一走・伊原は快足を飛ばして本塁を狙ったが中日守備陣が見せたカットプレーの前に間一髪、憤死したのである。

そのプレーについて球児はこう言った。「僕らも、若いころは『自分がバント決められんから走らなあかん羽目になるんや』と言われましたけどね…」。暗に犠打の重要さを示したものだが、そんな叱られ方をしていたのか…と感じ、少し興味深かった。

そんなことを思い出したのは、もちろん、村上頌樹の活躍があったからだ。球宴のファン投票、先発投手部門トップに応える形で7回1失点、7勝目をマークした。投球はもちろんだがキラリ光ったのは5回の犠打ではないか。

1点を追うこの回、1死一塁から村上は投手前にキッチリ犠打を決め、2死二塁。そこで近本の同点打が出た。その後、阪神にとってはラッキーな形で勝ち越し点が入り、村上は白星の権利を得たのである。

村上はこれが今季4犠打目で、自身キャリアハイとなった。さらに「53」で12球団トップの犠打数である阪神において、投手では最多の犠打数にも。先発で長い回を投げているからこその結果だろうし、これもエースとしての証明だ。

村上は智弁学園で伊原の先輩。これからエースへの道を歩むはずの伊原はここまで、まだ犠打「0」だが、先輩がいい見本を見せているのかもしれない。

8回には木浪聖也がチーム2位、7個目となる犠打を決め、ここもダメ押し点につなげた。阪神で最多は中野拓夢の「16」だが、これは12球団最多でもある。

「あそこでしっかり点を取れたのがよかった。我慢強く攻撃を仕掛けていくという意味ではよくやってくれましたね」。相手先発・森下暢仁を攻めた5回の攻撃について球児もそう振り返った。地に足のついた、いい逆転勝利だと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 広島に勝利し、スタンドのファンに手を振る阪神村上(撮影・前田充)
広島対阪神 広島に勝利し、スタンドのファンに手を振る阪神村上(撮影・前田充)