エスコン・フィールドに足を運んだ虎党は大喜びだった。もちろんテレビ観戦などでチェックしていたファンも同じだろうが。

交流戦スタート、敵将・新庄剛志率いる難敵・日本ハムに大勝して勝ち越しを決めた。そして佐藤輝明の記念弾まで飛び出す文句なしの試合になったのである。

だがこの日、勝てたのは言うまでもなく1回の攻撃が大きい。“四球攻勢”である。いきなり三者連続四球を選び、先制点は5番・大山悠輔の押し出し四球によるものだ。このゲームに限っては日本ハム先発の若い細野晴希が大乱調だったので、あまり参考にはならないけれど阪神の強さはこの「四球」にもある。

この日、5回までに3四球を選んだ近本光司がヤクルト・サンタナを抜き、24四球となり、四球数ランキング3位に浮上。1、2位はこの日、1四球ずつを選んだ中野拓夢、大山悠輔の「25」だ。

つまり、この時点でセ・リーグの四球数ベスト3は阪神勢が独占することになった。阪神打線はこの日、計8四球を選び、チームの四球数も「166」に。これはもちろんリーグ・トップである。

「四球」と聞いて熱心な虎党なら頭に浮かぶのは前監督・岡田彰布(現オーナー付顧問)だろう。この日、BS朝日の解説で同球場に登場。「ここからやったら、ライト側がちょっとアレやのう」などと岡田節で初の解説者席を楽しんでいたが、その岡田が変更したのが「四球の査定」だ。

年俸にかかわる査定ポイントを「安打」と同じだけ「四球」に与えることをフロントに進言、実現させた。それもあって23年、日本一に輝いたのである。指揮官が藤川球児に代わった今も、その査定法は生きている。球団関係者は「そこは継続している」と話す。

「選手がいろいろ考えてやってくれてますよね。(ボールに手を出して)相手投手をラクにさせないためにね」。四球を稼ぐ打線に対し、総合コーチ・藤本敦士はそんな話をした。

「四球数そのものは気にはしていませんけど。いつもいつも打てるわけじゃないし、四球は出塁率にもつながってきますからね。もちろん積極的にいくときはいきますけど」。首位タイの中野もそう振り返ったのである。華々しい勝利の陰にあるのは継続する地味な努力。あらためて、そう思う試合。阪神は最多タイの「貯金11」だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

日本ハム対阪神 試合後、デュプランティエとハイタッチする藤川監督(撮影・黒川智章)
日本ハム対阪神 試合後、デュプランティエとハイタッチする藤川監督(撮影・黒川智章)