最後まで気は抜けない。油断できない。阪神の今季90試合目はそういう意味で反省すべき結果になったと思う。チームというよりも、我々、見ている側のことだ。おかしなことを言うと思われるかもしれないが、そう感じるのだ。

初戦に勝った後、ここで「3連勝の気配を感じる」と書いた。延長11回に決着したが結果以上に試合をずっと見ていて、そういうムードを感じたのである。2戦目も1点差で阪神が取った。これは誰が見ても戦力差、実力差がある。そう感じていた。

史上初めて前半戦で今季の巨人戦勝ち越しが決まるという圧倒的な強さだ。「伝統の一戦」はもちろん、野球に限らず、勝負事は文字通り、勝ったり負けたりするから面白いし、ハラハラドキドキ興奮するもの。そういう意味では今季は面白みに欠けると思っている野球ファンは多いだろう。

阪神が勝てば無条件にうれしいはずの阪神ファンにしてもそれは同様なのかもしれない。大の虎党であるはずの知人が前日に「巨人弱すぎやろ」とメッセージを送ってきた。勝つのはうれしいが、あまりにも一方的だと、そう言いたくなるのが人情である。

思い出したのが94年の「10・8」決戦だ。若い人は知らないかもしれないが当時のセ・リーグ、中日と巨人が最終戦で勝った方が優勝という状況になったときのこと。当時の巨人監督・長嶋茂雄はそれを「国民的行事」と名付けた。

同時に「決戦になれば面白い、みんながそうなれば…と思うように(物事は)なるんですよ」という趣旨のことをミスターが話していた記憶がある。当時、その話を聞いていた東京本社の沢田啓太郎に確認したら「新横浜駅で囲んだときにそんなことを言っておられたね」と教えてくれた。

オカルトか…と言われるかもしれないけれど、先の見えない勝負の世界、そういうものはあると思う。阪神が4点差以上をリードしていて逆転負けするのは今季初。指揮官・藤川球児の誕生日にそれは起こった。

白熱のペナントレースを期待するのはいいことだし、同感だが、この時点で「阪神は優勝」と思うのは違う。いくら強くても最後まで油断はできない。08年の例もある。今更、言うまでもないことだろう。若いチームに慢心のようなものはないと思うが後半戦に向け、見ている側として、そう感じる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 9回裏巨人2死満塁、サヨナラ負けを喫した伊原(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 9回裏巨人2死満塁、サヨナラ負けを喫した伊原(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 9回裏巨人2死満塁、サヨナラ負けを喫し、引き揚げる伊原(左)、佐藤輝(同2人目)ら(撮影・浅見桂子)
巨人対阪神 9回裏巨人2死満塁、サヨナラ負けを喫し、引き揚げる伊原(左)、佐藤輝(同2人目)ら(撮影・浅見桂子)