意味ある決断にしてほしい。そんな気がするのは福島圭音が8回に決めたオープン戦初盗塁だ。決勝打で甲子園を盛り上げた西純矢の代走で出場するとウィンゲンターが次打者・元山飛優へ投じた1球目でスタート。二塁へ頭から滑り込み、セーフとなった。
サインかどうかはともかく、1球で盗塁を決めたのは事実。思い切りの良い走りっぷりにいいものを感じたので「ズバッといったね」と話しかけてみた。それに対し、福島は言葉を選びながら、こんな話をしてくれたのである。
「そうですね。筒井コーチ(外野手守備兼走塁チーフコーチ)とも話し合って。ちょっと臆病になってるな、と。ここまで成功したい、成功したいという気持ちがあって。そういうところの反省もあったんで」
入団3年目になる育成選手だが守備と走塁は光るものがある。それだけに出番が来れば「盗塁を決めなければ…」という気持ちになるのは無理もないところだ。だが、それが強過ぎるとスタートが切れなくなるのも事実。無心になって思い切り、決断ができるのもプロなのである。
思い出したのは福島がルーキーだった24年のオープン戦だ。2月に沖縄で行われた巨人とのOP戦で福島は対外試合初盗塁をマークした。しかし当時の指揮官・岡田彰布(現オーナー付顧問)は次打者の1球目から盗塁サインを出していたことを指摘。「何球走れんねん。スタートも切らへん。チャレンジしないやんか。1球目から走れ言うてんのに。何のために出てるのか。そういう意図が分からな」と怒ったのだ。
福島もそのときのことを振り返る。「もちろん覚えています。あのときは、まあ、あたふたしていて。右も左も分からない状況で」。OP戦とはいえプロの初対外試合、しかも巨人戦と大きな舞台への戸惑いが大きかったと明かした。
福島が支配下登録されるかどうかは今後の話だが、佐藤輝明、森下翔太がWBC出場で不在なだけに、例年以上に、多くの選手を試している現状だ。この日の本塁打でまた左翼手争いで一歩前に出た中川勇斗はもちろん、この日、ヒーローになった西純にしても同じことだろう。
大事なのは若手はチャレンジということだ。消極的なものはダメだが攻めた失敗をして叱られる時期ではないはず。そんなことを思わせる福島の盗塁だった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




