関東第一(東東京)は、「オコエのルームメート」5番長嶋亮磨外野手(3年)が公式戦初アーチとなるサヨナラ本塁打を放ち、5年ぶりの8強に導いた。2投手の無失点リレーで、中京大中京(愛知)に勝利した。

 長嶋の朝は、意外な幕開けだった。午前6時半の起床。ルームメートのオコエは、別室で寝たため不在だったが、「ピンポン攻撃されました」と告白。50メートル5秒96を誇るドラフト候補のピンポンダッシュに追い付けるわけがない。「朝から知らない洋楽を歌っているし、迷惑です」と苦笑いだ。

 そんな男が、およそ6時間後にスーパーヒーローになった。9回裏1死。初球の134キロ直球を振り抜いた。「打った瞬間に行ったと思いました。人生で最高の感触でした」と興奮は収まらない。高校通算2本目。公式戦初本塁打が値千金のサヨナラ打になった。

 東東京大会は、大会直前に左手首に死球を受けた影響で、背番号「14」だった。入学直後から左足捻挫や股関節痛などに苦しみ、おはらいを受けたこともある。苦労を知る米沢貴光監督(39)は「感無量になりました」と感情的になった。

 朝に強いということで、大会中はオコエのルームメートに“抜てき”された。「うるさいし、いたずら好きです」と困り顔。それでも1回2死満塁からのスーパーキャッチを右翼から見つめると「さすがだなと思った」と言った。サヨナラ直後には抱き合って喜び、「お前がヒーローだって言われた」と胸を張った。

 同じ千葉・君津市出身の同校OB、DeNA山下にあこがれて関東第一に入学した。5歳時に車庫で車に挟まれ、右手の親指以外の4本を骨折した。野球がうまくならない言い訳にすると、父展章さん(47)に「指のせいにしていたら、大した人間にならない」と一喝された。ケガにくじけず、コツコツ続けた努力が大舞台で結果になった。

 「関東一はオコエだけじゃない。ずっとそう思ってやってきました」。心優しいルームメートが、誇らしげに言った。【前田祐輔】

 ◆東京勢がアベック8強 早実に続いて関東第一も8強。東京勢2校の8強は東西2代表となった74年以降、06年(帝京、早実)に次いで9年ぶり4度目。95年は準々決勝で東京対決となり、帝京が8-3で創価に勝った。