すがすがしい夏の終わりだった。早実(西東京)に敗れた九州国際大付(福岡)山本武白志内野手(3年)は、試合後の整列で歩み寄ってきた早実・清宮に穏やかな顔で言葉をかけた。「頑張ってね!」。負けても「人前で泣くのは好きじゃない」と、涙なし。充実感に満ちあふれた最後の甲子園だった。

 「完敗だと思う。注目度の高い試合で1本打ちたかったが、相手投手がよかった。悔しさはもちろんあるが、今年は楽しくて、やり切った感はある。甲子園で3年間で一番いいバッティングができた。3本も打てるとは思っていなかった。たくさん打ててよかった」

 清宮とのスラッガー対決として注目を集めた山本。9回の最後の打席では本塁打を狙ったが、中飛。「インパクトを残してやろうと思って狙ったけど、しょうがないですね」。清宮には「本塁打もいい打球だったし、末恐ろしい。来年、再来年ともっと注目されて、目玉になると思うので頑張ってほしいですね」と、エールを送った。

 野球により打ち込める環境を求め、横浜から九州に渡った。プロ野球で64本塁打を放った父功児氏(63)の「野球をやるなら一生懸命やれ。1つ、2つ犠牲にしないとうまくはなれない。プロ野球選手の家の息子に生まれたんだったら、努力すればいいんだ」という言葉を常に胸に刻み、練習に打ち込んできた。

 今後はプロでの活躍を夢見ている。「バットを振った分だけ自分に返ってくると甲子園で分かった。(進路は)自分の中では決めているが、まずはゆっくりしたい。今後は見ている人を魅了できる選手になりたい」。あとは指名を待つだけ。今度はプロとして、必ず甲子園の舞台に戻ってくる。【福岡吉央】