山形中央がエース左腕遠藤慶徳(3年)に全てを託して、2年連続の決勝に進出した。この日の朝のミーティングで、選手たちは今大会不調が続く遠藤にこの試合を託すことを決断。これでチームは1つとなって、初回から猛打爆発の毎回得点。遠藤も5回2失点と期待に応え、5回コールドで山形城北に大勝した。

 指揮官は迷っていた。決勝進出のかかった大事なマウンドを、誰に託すべきか。庄司秀幸監督(41)は「私は決めきれなかった。情に流されたりするのではなく、勝つために誰でいくべきか」。この日朝のミーティングで、選手たちに決断を託した。主将の大泉周也外野手(3年)は「全員一致で遠藤に決めた。1、2年の投手の方が状態は良いかもしれないが、3年間一番努力してきたのは遠藤。あいつで負けても悔いはない。全員でカバーしてやろうと強い思いが湧きました」と試合に臨んでいた。

 昨秋、新チームで背番号1をつけた遠藤は、疲労骨折のため12月に左肘を手術。3月から投球を開始したが、最速134キロの直球は120キロ台中盤に。本調子に戻らず、春の県大会はベンチ外。再び1番を背負った今夏も、5回にリリーフで登板した準々決勝の羽黒戦で、わずか1死しか取れずにマウンドを譲っていた。

 遠藤は「情けない投球しか出来なかったのに、それでも自分に託してくれた仲間のために、今日は思い切って投げよう」と決意。この日は2回まで打者6人で抑えて波に乗り、今大会最長の5回を投げきった。遠藤は「みんなが必死に守ってくれたおかげ。ケガの間も仲間が支えてくれたから、今がある」と感謝した。

 3年ぶりの聖地まで、あと1勝。昨夏は決勝で延長の末に鶴岡東に敗れた。大泉主将は「やっと悔しさを晴らす舞台に帰ってきた。必ず借りを返す」と頂点を見据えた。【林野智】