広陵(広島)が、中京大中京(愛知)との最多7度目となる対決を制した。今秋ドラフト上位候補の中村奨成捕手(3年)が、2本塁打を含む4安打3打点の活躍でけん引した。

 右打者の中村が放った打球は、ぐんぐん伸び、右中間スタンドに届いた。2点を追う6回1死で相手投手が交代した直後だった。6球目の直球をかっ飛ばした。高校通算39号にして右方向への本塁打は初めて。「流れがほしかった。今までで1番の当たり」。規格外のパワーを大舞台で発揮すると、ガッツポーズで喜びを爆発させた。

 中村のソロで1点差に迫ると、さらに3者連続安打で逆転に成功。中村は8回にもまたまた右越えに2ランを放ち、公式戦初の1試合2本塁打も決めた。「驚きとうれしさと。本当に気持ちよかった」と笑った。

 OBで同じ捕手の巨人小林が目標だ。高校日本代表候補にも挙げられ、「小林2世」とも言われる。中井哲之監督(55)からは「(高校時代の小林と比べて)中村の方が全然上です。比べちゃいかん。ものが違う」と評価される。巨人岡崎スカウト部長からも「肩は強いし、足は速いし、バッティングも良い。素晴らしいホームランだったね。捕手ではトップの選手。1位で消える可能性もある」と絶賛された。

 けがの功名だった。広島大会初戦で死球を受け、右手首を負傷。大会打率は1割7分6厘と振るわなかったが、「いろいろ考えて、右手の使い方が強くなった」と思わぬ収穫があった。4日の甲子園練習ではセンター方向の柵越えも披露。「甲子園に来てから、ボールがよく見えるようになった」と調子を上げている。

 自慢の肩でも魅了した。逆転直後の6回無死一塁で、相手の捕前バントを素早く処理して二塁送球。遠投120メートル、二塁送球の最速1秒74の強肩を生かしてアウトにし、反撃の芽を摘んだ。チーム9年ぶりの初戦突破に貢献し、中京大中京には夏の甲子園87年越しのリベンジ。2回戦は左腕2枚看板を擁するV候補、秀岳館に挑む。【中島万季】

 ◆中村奨成(なかむら・しょうせい)1999年(平11)6月6日生まれ、広島県出身。大野東小1年から野球を始め、3年から捕手となる。中学は「大野シニア」に所属し、3年に県8強入り。広陵では1年春からレギュラーで、1年夏には背番号2。将来の夢は「日本代表の4番捕手」。50メートル6秒0。遠投120メートル。181センチ、78キロ。右投げ右打ち。