黒沢尻工が岩手を6-2で破り、3年連続で8強に進出した。6回に遊撃からマウンドに上がった菅原大夢(ひろむ)内野手(3年)が7回に決勝打を放ち、投げても4回3安打7奪三振無失点と投打に躍動した。菅原の兄3人は盛岡大付で甲子園に出場。だが四男はあえて兄3人とは別の道を選び、公立で史上初となる4兄弟甲子園出場を狙う。

 「ヨッシャー!」。最終打者を空振り三振に打ち取った菅原は、右手でガッツポーズをつくり雄たけびを上げた。前日17日は3-5で劣勢のまま6回降雨ノーゲーム。仕切り直しの一戦で投打に躍動し「自分が投げて、流れを変えようと思った。優勝しか狙ってない」と胸を張った。

 偉大な兄3人に続く。長男甲子郎さん(35)次男利満さん(30)三男優輝さん(20)はいずれも強豪私立の盛岡大付で甲子園出場。四男の菅原だけが「打倒私立で甲子園へ」と公立を選んだ。仙台育英野球部出身の父守さん(53)が、86年夏に秋田工を甲子園へ導いた黒沢尻工・石橋智監督(57)と知り合いだった縁で同校に進学を決めた。この日、スタンドで息子の勇姿を見届けた守さんは「本人が決めたこと。4人の中で野球の才能が一番で負けず嫌いなのが大夢。厳しい環境で、成長したかったのだと思う」と目を細めた。

 控室には兄3人の甲子園出場時の金メダルを持ち込んだ。試合前のノック後、5回終了時の整備中、マウンドに上がる前の3度、3つの金メダルを触りながら、心の中で祈るのがルーティンだ。菅原は「僕に力を貸してくださいって祈った。今日は力を貸してくれた」と目を輝かせた。10日の初戦後は熱中症で倒れたが、3時間の点滴で当日に復活。その後の夕食は「すき家」でメガ盛りと特盛りの牛丼を平らげた。「兄貴3人をプレッシャーに感じるけど、それを楽しみながらやりたい」。優勝し、史上初の4兄弟甲子園出場を実現させる。【高橋洋平】