6年ぶり24回目出場の広陵(広島)が、八戸学院光星(青森)を2-0で下した。エース右腕、河野佳(3年)が散発3安打に抑えて完封。8三振を奪い、打線が5回に挙げた2点を守り抜いた。その陰にはピンチでも笑みをたやさないチームの「ニコニコ大作戦」があった。

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8回2死二、三塁。河野が今秋ドラフト候補の強打者・武岡を141キロの直球で遊飛に打ち取ると、広陵ナインに笑顔の花が咲いた。

勝敗を分けたのはニコニコ大作戦だった。「ピンチの時こそ笑顔で」。今年のチームテーマだ。新チーム発足後、中井哲之監督(56)の知り合いを通じてメンタルトレーニングを導入した。ミーティング中、指揮官が選手に突然「笑顔してみい!」と指令を出すなど、笑顔の「オーダー」は試合以外にも及ぶ。センバツ開幕直前には、甲子園メンバーが監督室に呼び出された。待っていたのはコーチ陣が審査員を務める笑顔のテスト。「笑顔、やってみいと監督に言われました」と見事一発合格した渡部聖弥内野手(2年)は振り返る。どんな状況でも笑い落ち着いて振る舞えるか、抜かりなく点検し、甲子園に乗り込んだ。

8回に中冨宏紀内野手(3年)の失策が絡んで出来た、冒頭のピンチでもマウンド上のナインには笑顔があった。鉤流大遂(つりゅう・ひろみち)捕手(3年)は「失策が出てからの場面だったので変顔しました」と暴露。中井監督から「おもしろい」と評される満面の笑みで、一打同点と緊迫した場面で空気を一変させ、窮地を脱した。

試合後、中井監督は「エラーがたくさん出たけど、ここぞというところではよく守った。楽しんでくれたと思う」とナインをねぎらった。「日本中に笑顔の花を咲かせる」。選手宣誓で秋山功太郎主将(3年)が誓ったように、16年ぶりの頂点へ笑顔で挑む。【望月千草】