筑陽学園(福岡)が初出場で2勝し、8強入りを果たした。

同点で迎えた7回2死二、三塁で、中村敢晴内野手(2年)が左前への強烈なライナーで勝ち越しタイムリー。92年夏、西日本短大付(福岡)が全国優勝した時の主将で、現日本文理大の中村寿博監督(44)の次男が、父の教えを忠実に守って、甲子園初タイムリーでチームに初の8強入りをもたらした。

昔を思い出した。「小学校のころ、小指1本短くした方がいいと父から言われていた」。甲子園2試合目で、8打席(7打数)無安打。中学生からバットを目いっぱい長く持っていた2年生が、大舞台の勝ち越しのチャンスで左手小指1本分、バットを短く持った。「ここまで打ててなかったので、なんとか打ってやろうと思ってました」。父の教えを思い出して振り抜いた打球だった。そしてもう1つ「高校に入ってから、追い込まれてからのノーステップ打法は父から教えてもらったもの」と両足を大きく開いたまま打ってみせた。「お父さんはホント、明るい人で『失敗は成功のもと』がモットーで、自分も失敗していたけど、前を向けました」。初戦勝利の後に父から「打てなくてお前が沈んでたらチームに悪影響がでる。いい方向に考えろ」とメールが届いて気持ちも楽になっていた。

5回途中から3番手としてリリーフした西舘昂汰投手(3年)が8、9回のピンチを切り抜けて1点差勝利。江口祐司監督(56)も8強入りに「未知の世界で実感がない。選手は良くやっている」と最高の笑みを浮かべていた。【浦田由紀夫】