大船渡(岩手)の佐々木朗希投手(3年)が、春夏連続出場した84年以来35年ぶりの甲子園出場に王手をかけた。一関工との準決勝に先発し、9回2安打完封。最速157キロの直球とスライダーやフォークの変化球を操り、5者連続を含む毎回の15三振を奪った。盛岡四との4回戦で負傷退場した今野聡太内野手(3年)ら仲間や家族、応援してくれる地元のため-。25日の決勝、花巻東戦に勝つ覚悟を言葉にした。

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佐々木は最後の打者をスライダーで三振に斬り、球場全体を総立ちにさせた。右手で小さくガッツポーズ。黄色いグラブを2度たたき、白い歯も見せた。温存された準々決勝を含め中2日。全129球中、150キロ超の直球は24球あった。「力まずに良いボールが投げられたと思う。前の試合で投手陣が頑張ってくれたので、万全じゃないけれど、良い状態だった。でもまだ優勝してはいない。最後に勝たないと、初戦で負けるのと一緒。意味がない。(決勝も)勝ちにつながるように頑張ります」。この日の15三振を含め、今夏投げた全29イニングで毎回奪三振を継続中。決勝も先発完投の覚悟はできている。

校歌を歌い終え、全校応援の三塁側スタンドに向かう前、真っ先に走ったのは右太もも裏肉離れ中の今野のもとだった。走れない仲間を気遣って左横に寄り添い、疲労でパンパンの右腕で背中を支えた。パンッパンッと背番号3を2度たたき、裏方に徹してくれた親友をいたわった。「明日も(今野)聡太だけじゃないですけれど、スタンドのみんなの分も頑張らないといけない」。盛岡近郊で合宿中のチームを離れ、大船渡を治療で往復しながら臨む今野へ、佐々木らを中心に「コンソウ(今野の愛称)が出られるまで頑張るから」とLINEで激励。仲間を再出場させるためにも団結力は深まっている。

佐々木と今野は誕生日が1日違い。昨年の11月2日に佐々木がサプライズで「お誕生日おめでとう」と黒いマジックで書いた打撃用手袋をプレゼントした。今野もサプライズ返し。居残り練習することを佐々木に告げ、チームメートと佐々木の自宅に先回り。玄関先で隠れ、緊急誕生日会の幕を開けた。「切り開くよ 新時代 byそうた」と刺しゅうを入れたタオルも贈呈。「令和の新怪物」を予言する一品。2人はそれぞれの宝物をお守り代わりにバッグに入れ、激戦を勝ち抜いてきた。今野も「明日、出たい。朗希とみんなで勝ちたい」と意気込んだ。

甲子園常連の花巻東には「夏連覇は1度もなし」のジンクスもある。佐々木は「強いチームなので自信を持って投げたい。その準備をしっかりするだけ」。聖地まで、あと1勝。94年の盛岡四以来、公立校の出場を阻む私立の壁も乗り越える。【鎌田直秀】

▽巨人長谷川スカウト部長「(菅野)智之の高校時代と比べたら10対1だよ。抜群にいい。変化球もクイックも上手にできている」

▽中日八木スカウト「序盤は筋疲労が抜けるのに時間がかかったが、3回以降はなじんできた。力が抜けていても良い球が来ていた」