山形学院が7月11日に開幕する県独自の代替大会「山形県高校野球大会2020」に向けて勢いをつけた。

日大山形との準決勝ではタイブレーク8回表に「9番DH」鈴木廉捕手(3年)が左越え満塁弾。東海大山形との決勝でも1回表に「8番一塁」板坂竜晃内野手(2年)が右越え満塁弾を放って、有志私立9校による“夏の予行演習大会”を制した。今回は新型コロナウイルス予防対策に留意しながら全国に先駆けて大会形式で試行。選手はプレーで、関係者は運営面での手応えを得て2日間の幕を閉じた。

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山形学院の恐怖の下位打線が、試合をまたいだ「2イニング連続グランドスラム」で強豪を撃破した。準決勝のタイブレーク8回表2死満塁。鈴木廉は「初球からいっていいと言われていたので、ストレートだったら思い切りいこうと思っていた」。直球をフルスイングすると「ホームランは人生初なので、ビックリして何も考えることが出来なかった。大会形式の中で結果が残せたことはうれしい」と、本塁で仲間とハイタッチして正気に戻った。

約1時間後に始まった決勝。声援を自粛しながら見守る保護者たちから、思わず「うわあ、マジかよ~。これさっき見たシーンだよ。夢を見ているみたいだ~」の声。大きな放物線を描いた板坂は、三塁ベースを回ったころ、大きな拍手に包まれた。「どうしても最後(決勝)も勝ちたかった。自分も満塁弾は初めて。伸びてくれました」。カウント3-1から直球だけを待った嗅覚とパワーを発揮し、強烈な先制パンチを浴びせた。

全9校参加の変則トーナメントの中、連日のダブルヘッダーで最多4戦。創学館、山本学園、日大山形、東海大山形を相手に計36得点と、今冬に重点を置いた打撃練習の成果が結実した。鈴木廉は「甲子園という目標がなくなってしまったのは悔しいが、自分は高校で野球は最後。チームが代替大会で優勝出来るように、努力したい」と残り1カ月を完全燃焼する。板坂も「3年生に恩返しがしたい。先輩たちの悲しく悔しい経験を引き継いで、自分たちの代になったら引っ張っていきます」と決意。次は、初の山形頂点だ。【鎌田直秀】

▽日大山形・荒木拓也外野手(3年=7回には補殺で勝ち越しを防いだが、8回の一打同点機で最後の打者に)「最後の夏は日大山形の伝統と野球を伝える代替大会にしたい。親や支えてくれた人のためにプレーします」