伝統のコバルトブルー球児が難関入試を突破した。昨夏の甲子園交流試合に出場した磐城(福島)の清水真岳外野手(3年)が、東北大工学部機械知能・航空工学科に合格したことが24日までに分かった。野球部NO・1の秀才で校内成績も常にトップクラス。進学校らしく文武両道を実現した。

2年半、汗と涙を流した磐城グラウンドで清水は吉報の喜びを口にした。「合格してビックリ。素直にうれしい」。今年から新方式となった大学入学共通テストは、自己採点で6科目で計753点(満点は900)。得意の化学と物理はともに90点以上をマークするなど、「国語の点数が良くなかったけど、理系科目でカバーできた」と得点率83・7%と手応えがあった。「高校1年から志望していた大学」と、共通テストの得点ウエートが高く、2次試験に先だって行われるAO入試3期に出願。初志貫徹し合格を勝ち取った。

専攻希望はロボット工学。将来は、原子炉内にあるロボット開発に携わりたい夢を持つ。きっかけは10年前、東日本大震災による福島第1原発の事故だった。福島・いわき市出身で中央台南小2年時に被災。家族と自宅は無事だったが、大分県別府市にある父方の祖父母宅に半年以上も避難した。「テレビで見ていて事故にショックを受けた。いわき市には浪江町や楢葉町に住んでいた方々が移住し、今もたくさんの人が生活されている。それを知って、自分がどうにかしたいと思いました」。

恩師の存在も大きかった。木村保前監督(50=福島県高野連副理事長)だ。「本当にお世話になりました。生徒への理解がすごく厚かった」と感謝する。今も胸に刻む言葉は「Play Hard」。常に全力でプレーし、学校生活が野球にもつながると教えられてきた。合格は木村前監督にも電話で報告した。「良くやったな」の言葉をもらって、「うれしかったですね。結果で恩返しできました」と喜びをかみしめた。

仲間には感謝の気持ちを忘れない。昨春は21世紀枠で出場を決めていたセンバツが中止、夏の甲子園も消えた。目標を見失い、部活動を辞めて、受験に本腰を入れるか悩んだ時期もあった。それでも、法大に進学する岩間涼星主将(3年)を中心に、選手同士で何度も話し合い、現役続行を決めた。甲子園交流試合の国士舘(東京)戦では「2番左翼」でフル出場し、7回の最終打席で右前打。守備ではライナー性の打球をダイビングキャッチするなど攻守で躍動した。「自分は仲間をはじめ、先生方にも恵まれた。甲子園はスタンドがそびえ立っていて感動した」。苦楽をともにしたナインと、生涯忘れない思い出をつくった。

大学では仙台6大学リーグでプレーすることも視野に入れながら、野球を続ける。「どこで続けるかは分からないけど、頭で考えるプレーをしていきたい」。磐城での財産を手に、杜(もり)の都でも一旗揚げる。【佐藤究】

◆清水真岳 しみず・まさたけ。2002年(平14)5月15日、いわき市生まれ。小4年からソフトボールを始め、中央台南中では軟式野球部。磐城では2年春からベンチ入り。167センチ、64キロ。右投げ左打ち。家族は両親と妹2人。好きな歴史上の偉人は伊達政宗