専大北上(岩手)が王者の威信を取り戻した。昨春、涙をのんだファイナルで能代(秋田1位)に5-1で完勝。前戦11日(秋田戦)に142球の熱投を演じたエース右腕・岡本歩武(2年)が、9回を8安打1失点の完投勝ち。打っては「3番」で0-1の3回に同点適時三塁打を放つなど、3安打「猛打賞」と投打で躍動。チームを12年ぶり春の東北頂点へと導いた。ナインは夏本番に向けて、確かな弾みをつけた。

みちのく軟式野球「春の陣」を制したのは専大北上だった。4点リードの9回2死一、二塁。エース岡本が123球目を投じ、最後の打者を投ゴロに仕留め、ガッツポーズをつくった。9回を投げ8安打1失点。チームを12年ぶり3度目の優勝に返り咲かせた。「欲を言えば、三振で締めようと思っていたけど、自分でアウトにできて良かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

今大会2試合計265球を投げ抜く鉄腕ぶりを発揮した。11日の準決勝(秋田戦)では142球で9回を7安打5失点(自責4)と粘りの投球。中1日の決勝でも背番号1にふさわしいマウンドさばきを見せた。初回に2安打で先制点を許すも、2回以降は無失点。各打者の内外角を丁寧に突きながら、ホームを踏ませない。打たせて取る投球で味方バックも無失策で応えた。「疲労はなかったです。良いボールを投げることができた」。大会期間中は整骨院に通うなど回復に努めた。入念なケアが大一番での好結果につながった。

ピンチの時こそ攻めの姿勢を貫いた。6回2死一、三塁では全球(5球)直球を投じ、二飛に打ち取った。7回無死二塁でも直球を軸に組み立て、後続を空振り三振、二ゴロ、遊ゴロに仕留め、反撃の芽を摘んだ。「強気に攻めたことが良かった」。

悪夢を振り払った。昨春は仙台育英(宮城)に延長14回タイブレークの末に敗れ、あと1歩のところで涙をのんだ。「自分の投球で(昨春は)負けた。雪辱を果たして、優勝できたことは自信にもなった」。夏は岩手、宮城、福島の東東北地区の頂点を目指し、全国大会出場に挑む。「目標は全国制覇」と語り、その悲願実現へ大きな弾みをつける1勝となった。【佐藤究】