鹿実の勝ち! 鹿児島大会は8日、1回戦6試合が行われ、ノーシードの鹿児島実が、延長11回の激闘の末に神村学園との好カード対決を制した。先発左腕の赤崎智哉投手(3年)が11回を1失点、149球で完投。昨夏に左肘を疲労骨折した最速142キロのエースが、伝統校を初戦突破に導いた。今春の九州王者、神村学園は1回戦で涙をのんだ。

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平和リース球場は、決勝戦が行われているかのような緊張感が漂っていた。1本のヒット、1つのアウトを積むたびに、地鳴りのような歓声が上がった。1回戦。ノーシードの鹿児島実が、延長11回の死闘を経て今春の九州王者、神村学園との好カード対決を制した。エース左腕の赤崎は149球の熱投で1失点完投。最終打者を打ち取ると「もう、うれしかったです!」とほえた。

昨夏の大会終了後、2年生だった赤崎は左腕を伸ばせなくなった。「ずっと病院に行けなくて、大会後には左肘を疲労骨折してました。本当に痛かった。ずっと左腕は曲げたままでした」。ノースロー期間は2~3カ月続いた。今大会の前も2試合に登板しただけで、ほぼぶっつけ本番。「体力は限界でした。だけどチームは頑張ってくれていたので」。両足がつりながらも、気迫で11イニングをひとりで投げ切った。

ライバルの存在が、赤崎を奮い立たせる。同じ鹿児島の大島・大野稼頭央投手(3年)には「絶対に負けたくない」。大野はプロ注目の最速146キロ左腕だが、赤崎も最速142キロを誇る伝統校のエース左腕だ。「センバツもテレビで見てました。自分とは直球の回転数が違う。負けないように頑張りたいです」。両校勝ち進めば、顔合わせは決勝戦。その第1歩として、初戦を突破した。

春夏通算28度の甲子園出場を誇る鹿実が、神村学園に勝った。組み合わせが決まった時から衝撃が走った強豪対決。激闘を終えた球場には、スタンドからの惜しみない拍手が響き渡っていた。【只松憲】

◆赤崎智哉(あかさき・ともや)2004年(平16)4月11日生まれ、鹿児島県出水郡長島町出身。鷹巣小3年から「鷹巣ソフトボールスポーツ少年団」でソフトボールを始める。鷹巣中では硬式の「串木野ドリームズ」に所属。鹿児島実では2年秋からベンチ入り。主な球種は、直球にスライダー、チェンジアップ、カーブ。171センチ、74キロ。左投げ左打ち。

◆鹿児島実と神村学園 昨夏は準決勝で激突し、鹿児島実が9-8で勝利。5-5の延長10回に神村学園が3点を勝ち越したが、その裏に鹿児島実が4得点で劇的なサヨナラ勝ちを収めた。夏の大会ではこの日を含めて過去6度の対戦があり、通算成績は3勝3敗となった。

▽鹿児島実・浜崎綜馬捕手(延長11回に決勝の右前適時打)「こんなところじゃ終われないと思い、絶対に打つぞと思ってました。真っすぐ一本に絞って打つことができました」