兵庫大会は社が創部74年目で初めて夏の甲子園出場を決めた。3時間29分の大熱戦。タイブレークの延長14回に3安打を集中して3点奪い、引導を渡した。社ナインはマウンドへ。人さし指を天に突き上げた。山本巧監督(50)も言った。

「まだ、どのように思っていいか整理できない。勝ててホッとしてます」

底力が現れたのは12回の守備だ。同点の2死一、三塁。絶体絶命の窮地に立たされた。左打者が引っ張ったゴロは勝股優太一塁手(3年)のミットをはじいた。サヨナラ! 誰もが勝負ありと感じた。だが、あきらめていなかった。芝本琳平投手(3年)がベースカバーへ。ヘッドスライディングより早く一塁を踏んだ。勝股は「はじいたけど、球は近くにあった。冷静でした」と振り返った。

入寮生と自宅から通う生徒が交じり、公立校の工夫が光る。徹底的な反復練習で決断力を養う。投内連係やタイブレークのディフェンス。指揮官は「局面での選択力、決断力が高いチームになってくれた」と評した。一塁勝股は守備に難があった。1年生の1年間は打撃そっちのけで守備に明け暮れ、成果が出た。昨夏の甲子園8強の強豪私学を打倒。芝本は言う。「全員で束になって戦う」。スローガンの『全束力』で歴史を動かした。【酒井俊作】

◆社(やしろ) 1913年(大2)に小野実科高等女学校として創立の県立校。1948年(昭23)から現校名。生活科学科、体育科、普通科で生徒数は701人(女子378人)。野球部は1949年(昭24)創部で部員数65人。甲子園出場は春1度で夏は初出場。OBに阪神近本光司、楽天辰己涼介ら。加東市木梨1356の1。若浦直樹校長。