奈良大会決勝の対戦相手の生駒から贈られた応援の幕がアルプスから見守る前で、天理が4強入りした17年大会以来の夏1勝を挙げた。

緊迫した試合の先には、“2試合分”の喜びが待っていた。

4回1死から、主将の戸井零士(れいじ)内野手(3年)が二塁打。2死二塁で内藤大翔(やまと)内野手(3年)が中前に適時打を放ち、先制点を挙げた。さらに6回2死から、再び戸井の二塁打で好機をつくり、山村侑大捕手(3年)が適時二塁打で続いた。

奈良大会から打順がかわり、3番の戸井が4番に、4番の内藤が6番に座る新打順になった。ただ山村が「後ろに内藤がいる。内藤につなごうと思って打席に入りました」と、地方大会の4番が後ろにいたことが奏功。エース南沢佑音(ゆうと、3年)は9回2死から1点を失ったが、完投でマウンドを守り抜いた。

奈良大会の決勝は、天理ナインはガッツポーズも封印した。相手の生駒がコロナ禍でベストメンバーをそろえられなかった事情に配慮し、静かに整列。5年ぶりの夏切符を勝ち取っても、自分たちの喜びより、懸命にメンバーをそろえ、21点差の大差の試合で最後まで白球を追いかけた相手への思いやりを選んだ。思いのこもった幕切れに、決勝を見守ったファンから両校に温かい拍手が送られた。

この日は生駒からの心づくしの応援の幕が、天理応援団に加わった。戸井主将は「生駒の分まで頑張ろう、と思っていました」と、全国勝利への力に変えた。1点差の接戦を勝ちきり、ナインは笑顔でマウンドの南沢のもとに走り、列をつくった。選手の姿はなくても、生駒ナインもともに戦った1回戦になった。【堀まどか】

◆奈良県大会決勝VTR 強豪天理に、奈良大会決勝初進出の生駒が挑んだ。だが、生駒の部員に新型コロナ陽性者や体調不良者が続出。登録メンバー20人から12人を変更し、決勝は初めてベンチ入りした選手が11人。先発した1年生投手は大会初出場だった。天理は生駒の異変を知っていたが、中村監督は「手を抜く方が失礼。全力で戦え」とナインに指示。21-0で圧勝した。ただ、試合後はマウンドに集まらずに整列するなど生駒を気遣った。

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