ライバルの無念は晴らせなかった。鹿児島実が明秀学園日立に逆転負けし、初戦敗退。今春センバツ1回戦で、プロ注目左腕の大野稼頭央投手(3年)を擁する大島が負けた宿敵に、リベンジを果たせなかった。鹿児島県勢は春夏連続で同じ相手の前に涙をのんだ。

堅実な鹿実らしからぬミスが響いた。1-0の7回1死一塁で、エース左腕の赤崎智哉投手(3年)が右前打を浴びると、打球を右翼手がファンブルし、一塁走者が生還し同点。8回も二塁手の悪送球とカバーに入った左翼手のファンブルが重なり、勝ち越しを許した。宮下正一監督(49)は「甲子園練習もなく、崩れるなら内野手かなと。恐れていたことが出てしまった」と肩を落とした。

今年の鹿実は、ずっと綱渡り状態だった。結果を残せず、ノーシードで迎えた夏。地方大会1回戦は、今春の九州王者・神村学園だった。組み合わせが決まった瞬間、宮下監督は「僕らはいつでも死ぬ覚悟ができた」と話した。その神村学園を撃破し、聖地切符をつかんだ。「神村の時、選手たちはすさまじい気迫があった。今日もそういう意気込みでやろうな、と。自分たちの力がどこまで通用するか分からない中、よくやってくれたと思います」。紡いできた糸が切れ、指揮官は敗北を受け入れた。

エース赤崎は、昨夏の左肘疲労骨折から今大会で復活したばかり。ほぼぶっつけ本番の夏で、8回自責0の力投を見せた。左腕は「大島の分まで、勝ちたかったです」と悔やんだ。真夏の鹿実が燃え尽きた。【只松憲】

 

○…鹿児島実の筏(いかだ)伸之介外野手(3年)が、超ファインプレーでピンチを救った。3回2死一塁。相手4番石川が打った左中間の打球に「最初、打った瞬間は捕れないと思ったが、守備には自信があるので思いきって飛び込みました」と、ダイビングして右手でガッチリつかんだ。打っては、9回に先頭打者として中前打で出塁するなど、チーム唯一の2安打と気を吐いた。

▽鹿児島実・駒寿太陽主将(3年=1点差の惜敗に)「試合に負けたことは本当に悔しいです。ここまで連れてきてくれた赤崎に申し訳ないことをした」

▽鹿児島実・浜崎綜馬捕手(3年=中学時にバッテリーを組んだ赤崎に)「赤崎がいなかったら、本当にここまで来れてないと思う。ここまで連れてきてくれて、ありがとうと言いたいです」

▽鹿児島実・永井琳内野手(3年=3打数1安打に)「明秀日立さんは、打撃のチーム。打撃戦になると思っていたが、自分は4番の仕事ができなくて悔しいです」

 

◆22年センバツ大島VS明秀学園日立(1回戦) 大島はプロ注目の146キロ左腕、大野稼頭央投手(3年)が、序盤から苦しんだ。2回に押し出し四球で先制点を与えるなど3失点。3回にも1点を失い、4回も2四球が絡んで4失点した。打線も5安打と振るわず、0-8で初戦敗退。大野は「自分のピッチングができなかった」と悔やんだ。