衝撃の敗戦だった。大阪桐蔭は準々決勝下関国際(山口)戦を9回に逆転されて悪夢を見た。星子天真(てんま)主将(3年)も涙が止まらない。それでも最後まで仲間をいたわった。

この夏、大阪桐蔭が甲子園を勝つたび、強さの秘密を「○○力」で紹介する企画を立てた。球場近くの喫茶店で堀まどか記者と話し込んだ。異論なく一致したテーマがある。「主将力、は必要よね」。それほど星子のキャプテンシーが際立っていた。センバツで優勝しても真顔で「自分たちは弱い」と言い続けてきた。

小柄だが、存在感は抜群だ。168センチはメンバーでもっとも低い。小学生の頃は後列だったが、中学生になると身長を抜かれていった。背が高くなるサプリメントを探した。ある時、父一海さんに言われた。「上に伸びないなら、筋肉を横につけていけばいい」。現実を受け入れた。一方、父は幼い頃から、あることに気づいていた。

「遊びに行くときも、よくウチに集合してから、出かけていくんですよね」

星子の周りには人が集まる。ソフトバンクジュニアでもU12日本代表でも主将だった。藤浪らを擁した12年の甲子園春夏連覇に魅了され、熊本から大阪桐蔭へ。主将になった。だが当初はまとめ方に苦心。昨年末、同校元主将で、慶大でも主将だった福井章吾(現トヨタ自動車)に相談した。「みんなを巻き込む話し方をした方がいい」。リーダーのあるべき姿を学んだ。

星子は「64人全員で束になって」が口癖だ。大阪大会の試合日、朝6時からの練習は選手総出で手伝う。西谷浩一監督(52)は敗戦後に言った。「非常にいいチームで、好感を持てる、一生懸命やる学年。こういうチームで勝ちたい、勝たないといけない」。主将への信頼にも聞こえた。小さい体に、大きな心を育んできた。勝負の残酷さを知った夏が、人生の糧になることを願う。【酒井俊作】