神宮の魔物を、味方につけた。

ノーシードの岩倉(東東京)が、今春東京大会優勝の帝京を破った。エース&4番&主将の大野巧成(こうせい)投手(3年)は、大歓声のスタンドに向かって人さし指を突き上げた。両足がつったが、痛みよりも喜びが上回った。9回を被安打9の6奪三振5失点(自責3)、140球で完投。「100%を出し切りました。最初から飛ばしていった。気持ちとボールが一体になっていた」。4番としては、初回に先制の適時二塁打を放つなど3本の二塁打を重ねた。

胸の中には、感謝の気持ちがある。創価(西東京)で1年夏に投手兼外野手として背番号13でプレーしたが退学。出身の東久留米シニアの先輩やチームメートがいる岩倉に2年春に転校した。日本高野連の規定で、公式戦は編入後1年間は出場できないが、2年秋から主将に。豊田浩之監督(47)は「力のある相手に向かっていくマインドがある。他の選手も『行けるんじゃないか』と思えるようになった」と影響を明かす。大野は「優しく受け入れてくれて、のびのびとプレーさせてもらっている。感謝しています」と仲間への思いを明かす。

うまくいかないと、すぐに下を向いていた自分はもういない。「ピンチでの強さは成長したかな」と笑う。目標は97年以来の甲子園。最速142キロのエースとして、高校通算12本塁打の4番として「帝京の思いも背負って、しっかり戦いたい」と話した。【保坂恭子】

◆岩倉高 1897年(明30)に創立。野球部は1960年(昭和35)に創部。84年センバツに初出場すると決勝で清原和博、桑田真澄の2年生コンビ擁するPL学園に1-0で完封勝ちして初優勝した。97年夏の甲子園にも出場し、春夏1度ずつ出場。全国でも数少ない鉄道関係の教育を行う日本最古の鉄道学校でもある。主な卒業生はミュージシャンの尾崎世界観、落語家の柳家三語楼。所在地は東京都台東区上野7の8の8。森田勉校長。

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