<高校野球東東京大会:共栄学園5-4岩倉>◇28日◇準決勝◇神宮球場

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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帝京、修徳を破った岩倉(東東京)のエース大野巧成投手(3年)の夏が、衝撃の幕切れを迎えた。

1点リードの9回2死二、三塁。内野に高く上がった飛球を見て「打ち取った」と思った次の瞬間、落下地点に入る三塁手の動きに危機感を覚えた。落球で内野安打となり、2者が生還。決勝まであと1死から、まさかのサヨナラ負け。「負けた実感がなかった。相手の喜ぶ姿を見たくない」と地面に突っ伏した。

1年時に創価(西東京)を退学し、2年春から岩倉に転校。規定で1年間は公式戦に出られなかったが、豊田浩之監督(47)から指名を受け、主将を務めた。昨秋の都大会も出場できなかったが「主将として背中で見せるために」と練習のサポートを率先して行った。チームメートも「チームに欠かせない絶対的な存在」と絶大な信頼を置く。

今大会では準決勝までの6試合全てに先発し、5回戦から準決勝までの3試合は完投。11年ぶり4強の立役者となった。「神宮のマウンドに3回も立てて良かった。楽しかったです」。岩倉の選手として挑んだ最初で最後の夏は、忘れられない思い出となった。【玉利朱音】