愛工大名電が逆転で中京大中京を下し、3年連続15度目の夏の甲子園出場を決めた。

愛工大名電のエース笹尾日々喜投手(3年)は、相手を打ち取るたびマウンド上で何パターンものガッツポーズを披露した。7回から9回まで得点圏に走者を置きながら、要所で得意のスプリットを駆使して中京大中京打線を抑え、伝統校対決を制した。

マウンドに片膝をつきながら喜んだかと思えば、クルッと半回転して吠えるなど、さまざまな形で喜びを表現した。「思わず感情が出ちゃいました。ポーズは体勢の崩れ方次第で変わります(笑い)」。感情むき出しにして投げ続け、9回も「行かせてください」と志願。最終打者を二ゴロに抑えると、拳を派手に突き上げた。

聖地に導くエースだが、元々は全国制覇する強豪チームに所属するサッカー少年だった。転機となったのは、小2のクリスマス。サンタさんにはプレゼントにサッカーボールをお願いしたはずだったが、枕元に届いたのはなぜかグラブとバットだった。そこから高校野球好きだった祖父が畑にマウンドを造り、駐車場を打撃練習用に改造。母からも「そろそろ野球に…」と勧められ、当時サッカーしか考えていなかった本人曰く「まさかの感じで」、野球に転向することになった。

そんな始まりだった野球生活だが、今や毎朝8キロ学校まで走ってスタミナに自信を付け、変化球の研究にいそしむまでになった。「ストレートと同じ軌道から変化させられるところが強みです」。スライダーやスプリットの曲がり始めや落ち始めのポイントを調整できる技巧派に成長した。

愛知3連覇を達成し「去年の先輩の8強を上回る成績を目指したいです」と話す右腕は、繊細な変化球と多彩なガッツポーズで甲子園を沸かせるつもりだ。【永田淳】

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