<全国高校野球選手権:仙台育英19-9浦和学院>◇6日◇1回戦

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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浦和学院の二塁を守る月山隼平内野手(2年)の左手には、使い込まれた薄い茶色のグラブがあった。「すごく使いやすいんです」。7月に45歳で亡くなった三浦貴コーチが使っていたものだ。訃報を聞いた後、監督室に飾られていたグラブを見つけた。「使ってもいいですか?」。森大監督(30)から譲り受けた。

入部した時、守備が苦手だった。レベルの高いチームメートについていけず、悩んでいた時につきっきりで教えてくれたのが、三浦コーチだった。全体練習後にグラブや1歩目の出し方など、基本からたたき込んでくれた。2年で二塁手のレギュラーとなり「今、守備が得意なのは貴さんのおかげです。球際には、自信があります」と胸を張る。

グラブを譲り受けたと聞いた母・真実さんは「三浦コーチの思いも受け継いで、頑張ってねと伝えました。(県大会で)ゲッツーを取った時は、三浦先生がついていてくれるんだと思って。本人はうれしい半面、重みやプレッシャーもあったと思います」と察する。

月山の好きな言葉は「一瞬に生きる」。三浦コーチが掲げていた言葉だ。これからも胸に刻んで、このグラブとともに聖地を目指す。【保坂恭子】