2戦連続サヨナラ勝ちで初のセンバツ8強入りだ! 青森山田が広陵(広島)に延長10回タイブレークの末、6-5でサヨナラ勝ち。2-5で迎えた9回裏1死満塁のチャンス。佐藤隆樹外野手(2年)が、左中間を破る起死回生の同点適時三塁打を放ち、5-5のタイブレークへ-。10回裏無死一、二塁の二塁走者として出塁した佐藤隆は、対馬陸翔外野手(3年)のバントで進塁。その後迎えた無死満塁で4番原田純希内野手(3年)の中犠飛でサヨナラのホームを踏み、チームメートと抱き合って喜んだ。

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劣勢でも笑顔だった。7回までは0-0の投手戦だったが、8回表に2失点。均衡を破られた。しかも打線は、7回まで相手エース高尾響投手(3年)にノーヒットノーランに抑えられていた。だが、チームは前を向いていた。

8回裏に2点を返し、試合を振り出しに戻した。9回表に3失点したが、「負けてても、『まだまだ』だったり、『想定内』だったり、プラスの言葉がすごく飛び交っているので負ける気はしなかった」と佐藤隆。9回1死満塁、「自分がやってきたことを出すだけ」と向かった打席で、高めに浮いた初球スプリットを振り抜き、走者一掃の三塁打。塁上で何度もガッツポーズしたが、「実感がないというか…。うれしいんですけど、地面に立っている気がしなかった。ずっと足が震えていました」。試合後も唇はずっと震えたまま。「(昨秋の)東北大会でベンチにいたときからは想像もつかないような所に立っている」。自身も想像しなかった大活躍だった。

野球をやめようと思った時期もあった。「中学1年の時にやめそうになったんですけど、頑張って続けてみたら、仲間がすごいいいやつばかりで…」。監督、コーチ、仲間とともに支え合う野球が楽しかった。青森山田でも仲間に恵まれた。佐藤隆は埼玉県所沢市出身。故郷から700キロ近く離れた同校に進学したが、母香美さんは「遠いところで生活するにあたって、本人が『何の心配もないよ』って。仲間に恵まれているんだなと感じています」。家族もそう感じるほど、野球を楽しんでいる。佐藤隆は「(青森山田には)ほかのチームにはない明るさがある。試合中でもベンチの中がすごく盛り上がっていて、明るさが途絶えない」。その環境がまさしく、佐藤隆が野球を楽しめる秘密だ。延長10回、サヨナラのホームを踏み、駆け寄ってきたチームメートの顔は「楽しそうでした」。最高の仲間とともに、粘り強くつかんだ勝利をかみしめた。

試合後、佐藤隆は「野球が一番楽しいです」と何度も口にした。次戦も仲間のために笑顔で自身の仕事を遂行する。【濱本神威】