<高校野球北北海道大会:遠軽8-1富良野>◇19日◇準決勝◇帯広の森

 北北海道決勝は05年と同一カード、遠軽と旭川工の顔合わせになった。8回コールドで富良野を破った遠軽は2年連続の決勝進出。1回戦での救急車搬送で大会中の復帰が微妙だった庄司満三塁手(3年)が、先発に戻って4安打3打点と打線をけん引した。

 戦列に戻った遠軽の絶好調男が、初の甲子園を目指すセミファイナルのステージで大暴れした。打球を顔面に受け、救急車で病院に運ばれた負傷退場から4日。庄司が「8番三塁」で先発復帰した。「1回戦で自分が倒れてチームに迷惑をかけた。出るからには勝利に貢献したい気持ちが強かった」。2回表の第1打席で中前へ同点適時打を放つと、4回には右越えに勝ち越し二塁打。全4打席安打の3打点で、チームを決勝に導いた。

 驚異の回復力だ。前日18日の休養日は「長く立っていると、ふらついたりする」という状態。練習に参加したが、打撃練習などは行わなかった。しかし、この日は朝から体調が良好。佐藤貴之監督(41)に朝食時に報告すると「試合に出られるか?」と聞かれ「いきたいです。出るなら最初からいかせてください」と直訴した。佐藤監督は「無理してないと分かって、球場入りしてから決めた。守備では打球が怖かったら逃げてもいいと話していた」とスタメン起用を決断した。

 両親は祈るような思いで、スタンドから見守った。父勝美さん(45)は球場入り前の電話で「ホームランが打てそうな気がする」と元気な声を聞いた。半信半疑だったが、縦横無尽にグラウンドを駆ける姿に「ここにいれることが、本人にとって幸せなこと」と笑みを浮かべた。母遊美子さん(44)も「遠軽に戻って再検査を受けた時、異常なしと診断されたら、すぐに『俺は行く』と。連れてきて良かったです」と、安堵(あんど)の表情を見せた。

 北見地区予選から通算15打数13安打、打率は予選9割に迫る8割6分7厘まで跳ね上がった。河合主将は「何なんですかね、あいつは」と頼れるチームメートの復活劇に驚き、笑った。佐藤監督は「去年は(甲子園を)意識しないようにさせたが、うまくいかなかった。今年は選手に思い切り意識させて決勝を戦います」。ファイナル“4度目の正直”で05年決勝の雪辱を果たし、日本最北の代表の座を勝ち取る。【木下大輔】