<高校野球宮城大会:仙台育英9-1聖和学園>◇22日◇準決勝◇クリネックススタジアム宮城

 仙台育英が聖和学園に大勝。負傷で春を棒に振った5番早坂和晋(かずゆき)外野手(3年)が、3回に3点適時二塁打を放ち、流れを引き寄せた。

 チームのためなら、形なんてどうでもよかった。3回2死満塁、直球にヤマを張っていた早坂は、高めのボール球を迷わず大根切り。打球は左翼手の頭上を越え、先制の3点適時二塁打となった。佐々木順一朗監督(52)は「気持ちが乗り移ったような打球だった」と大量点の口火となった一打をたたえた。

 「自分が打たないと、チームは勝てないと思う」(早坂)。口元からのぞく白い歯の根元は、黒く変色していた。3月下旬の練習試合で、投球が顔面を直撃した。前歯3本が折れ、唇の内側を縫い「1週間は飲み物を飲むのも大変だった」。さらに2度の左太もも肉離れに見舞われ、本格的な実戦復帰は今大会から。東北大会準優勝にも「自分は必要なのかな…」とベンチから複雑な心境で見つめていた。

 だが、ナインは早坂を待っていた。秀光中時代からチームメートのエース渡辺郁也(3年)は「『打たせて取る方がいいよ』とか、通院で来られない時もメールをくれた。頼れるヤツなんです」と復活を喜んだ。6回にも適時打を放ち、2安打4打点と大活躍の早坂は「甲子園優勝以外に、恩返しできる方法はない」。3年ぶりの甲子園切符をかけた決勝は、盤石の態勢で臨む。【今井恵太】