<高校野球愛知大会:愛工大名電10-2豊田西>◇28日◇準決勝◇岡崎

 「高校ビッグ3」の一角、愛工大名電の浜田達郎投手(3年)が2季連続の甲子園出場に王手をかけた。愛知大会準決勝で今大会最速145キロの直球を軸に豊田西打線を封じ8回コールドで完勝。昨年涙をのんだ決勝に“カブトムシ”魂で雪辱を期す。

 浜田が涼しい顔で決勝切符をつかんだ。ガッツポーズもなし。淡々と王手をかけた。対照的に投球は力感十分。「今日は真っすぐ中心で押していきました」。立ち上がりの1回に今大会最速の145キロを計測。力でこの回を3者凡退にねじ伏せた。準々決勝までの全4試合で初回に複数得点を挙げ先制していた豊田西の出ばなをくじき、そのまま4安打2失点完投。打線も多彩な攻めで呼応し、完勝した。

 昨年の悔しさを晴らす時が来た。1年前の決勝はリリーフ登板したが、無名の至学館にまさかの敗退。詰めを誤り涙をのんだ。倉野光生監督(53)は「去年は決勝まで来て(勝てると)気が抜けた部分があった」と振り返る。気の緩みが招いた痛恨の1敗だった。

 05年春の甲子園も制した名将は、同じ過ちを繰り返さないように手を打った。休養日だった27日早朝4時に雑木林に入った。最寄りの熊野神社近くでカブトムシを捕獲。合宿所に持ち帰って玄関の飼育箱に入れた。「“勝ってかぶとの緒を締めよ”ということで、カブトムシを捕ってきたんです」。単なるダジャレではない。その通りの訓示を浜田ら選手にも行った。オス3匹、メス1匹。由緒正しい神社からやって来た“守り神”も背中を押している。

 決勝の相手は最強のライバル東邦だが、気負いはない。「相手は気にしない。自分のピッチングをするだけ。連投の方がいいボールが行く。抑えればそれでいいんです」と浜田。よほど自信があるのだろう。怪物左腕は、不気味なほど落ち着いていた。【八反誠】